HOMEMagazine2011年蕎麦Web博覧会 > 『天山』で蕎麦ぶるまいします。 川内村へ応援に行きませんか?

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『天山』で蕎麦ぶるまいします。
川内村へ応援に行きませんか?

 川内村は、東京電力の福島第一原子力発電所から20~30km圏内にあり、緊急時避難準備区域に指定されています。これは、どういう地域かというと、つまり「国は引き続き自主避難を求めますが、緊急時に自力で避難できる人は、そこに居てもいいですよ」という場所なのです。

 原子力発電所の事故が起きた当時、約2900人いた住民のほとんどが、郡山市などに避難しました。しかし、その後、望郷の気持ちが強いお年寄りを中心に、約200人の方が、この村に戻って生活しています。お年寄りを、ひとりで村に帰すわけにはいかないからと、お嫁さんなども、一緒に村に戻ってきているのです。
 村内で200人の方が戻って暮らしている地域は、放射線量の比較的低い地域です。数値でいうと、0.16とか0.2マイクロシーベルト。いわき市などとほとんど変わらないレベルなのです。
 村内の一部には、放射性物質が多く飛散し、戻ることのできない警戒区域もあります。村の8割を占める山林は放射性物質に汚染されているので、林道など、山林に続く道には立入禁止の看板が立てられ、通行を遮っています。
 村の人たちは、そういう場所には近づきません。数値の低い畑で栽培した野菜などで、自給自足の生活を送っています。

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 この村に、一軒の蕎麦屋さんが開いています。
 店の名は『天山(てんざん)』。ご主人は井出茂さんという方で、『蕎麦Web検定大学』を受講している仲間です。

 東北地方太平洋沖地震が起き、続いて東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こったあと、混乱の中で井出茂さんと連絡がとれなくなりました。ご無事ならばいいのだけれどと、様々な方法で探していたところ、ツィッターを通してどこかの方が「お探しの人は、この方ではありませんか」と、居場所を教えてくださったのです。
 井出さんは、本人にもご家族にも、怪我などはありませんでした。連絡がとれたときは村の多くの方々と一緒に、郡山市に避難しておられました。

 井出さんの長男は、数年前から川内村の自宅で、蕎麦屋『天山』を経営していました。井出さんも、その店を手伝っていました。
 そこにあの3月11日の大地震。続いて原発事故が起こり、井出さん一家は店も家もそのままにして、家族みんなで避難したのです。

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 それがなぜ再び、村に戻って店を開いているのでしょう。理由を井出さんは、次のように語ります。
「うちは蕎麦屋だけではなくて、同じ建物の続きで小松屋という旅館も経営していたのですが、避難先に東京電力の関連会社から電話があったのです。ぜひ旅館を開けてくれ。小松屋から通わないと、通えないからと。話を聞くと、夏場に向けて火力発電所を再開したいので、その作業をするために宿泊場所が必要だというのです。それで4月19日に、私だけ川内村に戻って、旅館を再開したのです」
 小松屋には、火力発電所のがれきの撤去作業をする人たちなどが泊まり、そこから火力発電所に通いました。人数は5~6人。3ヶ月ほどその作業は続いたといいます。そのほかに除染作業をするチームも、何回かに分けて泊まっていきました。
 旅館を開いているのだからと、蕎麦屋も再開したのは6月の初旬ごろ。燃料はプロパンガスなので、補給すれば使えます。水は井戸水をポンプで組み上げていましたが、こちらは幸いにも被害がありませんでした。建物は、震度6強という激しい揺れで、あちこち壊れましたが、補強すればなんとか使えそうです。
 こうして長男から引き継ぐ形で、お父さんの井出茂さんが、『天山』の主人になったのです。

 近所には飲食店に限らず、開いている店など一軒もありません。でも、『天山』があるから食事ができる。井出さんの店は、数は少ないけれど、ここを訪れなければならない人には、とてもありがたい存在なのです。
 『天山』を訪れる客は、川内村役場の人や、家屋の耐震検査をしている人。災害対策本部に応援に来ている総務省や、経済産業省の関係者。そういう人たちが川内村に寄った帰りに、ここで説明を受けながら蕎麦を食べていくのだそうです。警備にあたっている警察や消防署の人たちも、この店が開いていてくれて、とても助かっているのです。

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 井出さんの家族は今、埼玉や郡山で別々に暮らしています。
 井出さんは家族と離れ、この場所で、川内村を守るために作業している人たちのために、蕎麦を打っています。
 井出さんは言います。
「誰かがここにいて守っていないと、若い人などが村に戻って何かしようと思っても、足がかりがなくなってしまうんです。ここに居続けることが、復興の大前提になると思うんです。それと"できる人が、できるときに、できることをやっていく"、これが川内村を残していくための最終手段だと思っているのです」
 根気強く、辛抱強く、井出さんは、きょうも『天山』で、蕎麦を打ち続けています。

 川内村に、白い雪がちらちらと舞い降りる季節がやってきました。
 井出さんは、囲炉裏の火を見ながらつぶやきます。
「今、村にいる人たちは、クリスマスや正月、きっと寂しい思いをするだろうな...」
 緊急時避難準備区域にいる人たちに、支援の手はとても届きにくいのです。企業が避難所に届けるであろうクリスマスケーキも、この村にはたぶん届くことはないでしょう。
 川内村の正月は、やっぱり寂しいものになりそうです。

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 だから、どなたか、私たちと一緒に、川内村の皆さんを励ましに行きませんか? 落語の得意な方とか、お年寄りが喜んでくれそうな音楽を演奏できる方。そのほか、なんでもいいんです、心が明るくなることが出来る方。川内村の皆さんに、元気を出してもらいましょう。
 クリスマスにはちょっと間に合わないけれど、『蕎麦Web検定大学』では、この地域に暮らしている方々に、おいしい蕎麦を召し上がっていただこうと、「蕎麦ぶるまい」を計画しています。
 日程は、今、検討中ですが、2012年の1月ごろになると思います。『天山』の店をお借りして、楽しいお祭りを、ここに暮らしている皆さんと楽しみたいと思うのです。
 「一緒に行って、応援するよ」とおっしゃってくださる方、メールでご連絡ください。お待ちしています!


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