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小さな町の、小さなそば屋の物語/福井県 -蕎麦Web-

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田舎の小さな町にある、小さなそば屋さん。ちょっと頑固なご主人が、手打ちそばを打って、おいしいそばを出している。知る人ぞ知る小さな名店......行きたいですよね、そんなそば屋さん。
こういうお店が、福井県には、たくさんありまです。
小さな町の魅力的なそば屋さん、何軒かご紹介しましょう。
・・・・・・・写真と文=片山虎之介


おいしい蕎麦は、小さな蕎麦屋にあります

福井のそば屋さんは、どの町の、どこのお店に入っても外れがありません。
店によって個性も様々。どのお店にも常連客がついています。
福井では、おいしくないそば屋さんは続きません。なぜなら、すべてのお客さんがそば通だから。おいしいそばの味を熟知しているので、今、元気に営業を続けている店は、すべて、地元のそば通のお眼鏡にかなった味ということになります。
そうしたそば屋さんの中には、駐車場に県外ナンバーの車が並ぶ店も珍しくありません。
小さなそば屋に、長い行列。これが福井の町の、日常の風景です。
福井では、小さなそば屋さんが輝いて見えます。


福井県・大野市『えびすや』の、おろしそばが評判です


福井県には、おいしい「おろしそば」を提供するお店が何軒もありますが、『えびすや』は、その一軒。
「おろしそば」とは、大根おろしの汁を、地元の醤油などと合わせておいしい汁に仕上げ、麺にかけて食べるそばのことを言います。福井県は昔の呼び名を「越前」といいましたが、このそばは「越前おろしそば」の名前で、福井名物として、そば好きの人たちに良く知られています。
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福井の名店・勝山市の『手打ちそば 八助』は超人気店


『手打ちそば 八助』は関東地方から通う常連客も多く、味、雰囲気ともに、福井県の小さなそば屋を代表する一軒です。
この店は明治時代から製粉所として仕事をしてきたのですが、今の主人の代に、そば屋も併設して始めました。そのそばがおいしいと評判になり、遠方からもお客が集まるようになりました。
味の良さはもちろん、いかにも「小さな町の小さなそば屋」といった雰囲気の良さも抜群なので、おもむきのある、たたずまいを楽しんでください。
おすすめは、「おろしそば」や「とろろそば」。「もりそば」も人気のメニューです。
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fukui0877-670-1.jpg『手打ちそば 八助』の店の外観は、古い時代の製粉所のまま。小さな町のそば屋の魅力が、ここに詰まっています。


福井県・勝山市といえば「恐竜博物館」と「雪むろそば」

何万年という時間をタイムスリップして、恐竜が生きていた時代を体験できるのが「恐竜博物館」。
それと並び称される人気のそばが「雪むろそば」です。
これは、雪をたくさん詰め込んだ倉庫「雪むろ」に、そばの実を保管しておき、いちばん暑い季節に、それを取り出し、打って食べるのです。
真夏に、新そば以上においしい蕎麦が味わえるという驚きのそば。まるで新そばの季節までタイムスリップするような嬉しい体験が、福井県勝山市でできます。


勝山市の「雪むろそば」がおいしいのはなぜ?


「雪むろそば」は、「福井在来種そば」というソバの一種、「勝山在来」を使って作ります。
勝山市で栽培された「勝山在来」を使っているから、おいしいのです。
勝山在来がおいしいのには、理由があります。
昔から、この土地で、ずっと栽培され続けてきた「在来種のそば」は、土地の気候風土に馴染んでいるため、味がしっかり乗っているのです。
その実を「雪むろ」で保存すると、そばの実は、春がきても夏がきても、季節が変わったことに気づかず、深く眠り続けるのです。
その眠りが勝山在来のおいしさを、さらに熟成させて、別格のレベルにまで引き上げます。
極上のそばが栽培される福井県の中でも際立っておいしいと「雪むろそば」に人気が集まるのには、「なるほど」と納得できる、このような理由があるのです。
(福井在来がおいしい理由は、「在来種の蕎麦がおいしい理由」の記事に詳しく解説してあります)


福井県・大野市の老舗はメニューも多彩『そば処 梅林』


福井県を訪ねたら、ぜひ、そばの食べ歩きをしてください。
県内の市、町ごとに、名店と呼ばれる小さなそば屋が、いくつもあります。
これらの店は個性が豊かで、店ごとに特徴のある味が楽しめるのです。
そば処 福井県の楽しみ方は、町の小さな蕎麦屋さんを食べ歩きながら、土地の人々の温かい人柄に触れたり、その土地の名所を見たりすることです。
大野市の老舗そば屋『そば処 梅林』には、遠方から常連が足繁く通う、魅力的なメニューがたくさんあります。
そのひとつが「肉そば」。おいしいそばと、おいしい肉を合わせたら、何倍もおいしくなるに決まっています。
味付けは、長い年月、秘伝として守られてきた絶妙の塩梅。微妙な「さじ加減」が、おいしさを際立たせるのです。

寒い季節だけでなく、夏のスタミナ補給にピッタリと注文が絶えない『そば処 梅林』の「肉そば」。「おいしいから食欲の落ちた夏も食べられる」と評判です。
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基本の「ざるそば」も、極上の出来。福井県には、多彩なそばの食文化があります。
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落ち着いた店のたたずまいに、旅の疲れもとれるようです。『そば処 梅林』
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福井県・勝山市にはランチが人気の『食庵 おり田』があります

おいしくてリーズナブルなランチが食べられるとクチコミで人気が広まったのが福井県・勝山市の『食庵 おり田』。お昼が近づいて、おなかが空いた人には見逃せない店です。
この店でも、夏には「雪むろそば」が味わえます。
「雪むろそば」が提供されるということは、名店であることの証(あかし)です。
「この店の雪むろそばが食べたい」と、お客さんが求めるから、貴重な「雪むろそば」を仕入れて、そばを打つのです。

人気の「ざるそば」から、トッピングの刻み海苔をのぞいたそば。そばの香りを大切にするそば好きの人に好評の食べ方です fukui7698.jpg

油揚げを刻んで、玉子と一緒に具材にした、地元のそば好きが大好きなメニュー「刻み揚げそば」。
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「ふくい新そばまつり」は、おいしさが際立つ「在来種の新そばまつり」です

5年後には北陸新幹線がのびる、そば処・福井県には、いったい、いくつのそば産地があるか、ご存じですか?
ざっと挙げると、丸岡、坂井市、永平寺町、福井市、越前町、南越前、あわら、勝山、武生、鯖江、池田、今庄、大野、鯖江、これらがすべて、個性に富んだそば処なのです。
これほど多くのそば処が集結する県は、なかなかありません。
しかも、これらの地域のそばのおいしさは、折り紙付き。何しろ、それぞれの地元で栽培される在来種を使っているのですから。

そば通の方なら、「おっ!」と、うれしくなるような名前が、いくつも出てきます。丸岡在来、勝山在来、永平寺在来、今庄在来、大野在来など。関東地方でも「こだわりのそば屋」といわれる名店に行くと、これらのそばを使ったメニューを提供している店がたくさんあります。そうした店では、福井産の在来種は、いわばお店の看板商品になっているのです。

福井県内のそば処のそばが、福井駅前の会場に集結するのが、毎年、11月に開催される「ふくい新そばまつり」です。
江戸時代の昔から、そば通が首を長くして待ったのは、秋に収穫される秋の新そば。秋の新そばだから「秋新」とも呼ばれます。
在来種の「秋新」には、日本そば本来のおいしさが備わっています。
「ふくい新そばまつり」の会場で、福井各地のそば処のそばを味わったなら、そのおいしさに、「なるほど、福井県の人がそば好きになるのも無理はない」と、きっと思われることでしょう。
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「全日本素人そば打ち名人大会」も同時開催

「ふくい新そばまつり」では、主要なイベントとして、全国からそば打ち愛好家が集まって、腕を競い合う「全日本素人そば打ち名人大会」が開催されます。
北から南、各地で行われる予選大会を勝ち抜いてきた人たちは、「ふくい新そばまつり」の会場で、「全日本素人そば打ち名人大会」の決勝大会にのぞみます。ここで優勝した人には、「第23回名人」の称号が贈られるのです。
この大会は、もう23年も続いている、歴史ある大会です。その歴代名人の中に並ぶことができるのですから、参加する人たちも真剣です。
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張り詰めた空気の会場に、そばを打つ麺棒の音が響きます。
厳正な審査によって選ばれた優勝者に賞状が渡される表彰式は、新名人はもちろん、会場に集まった誰もが感動する場面です。
おいしいそばと、感動と、人々の喜びを、そばがひとつに結びます。
「ふくい新そばまつり」は、福井そばのすばらしさをすべての人が共有できる、「在来種の新そばまつり」なのです。
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地元に育つ、そばを愛する若い力

古い街道に沿って、歴史のあるそば処が並ぶ福井県では、そばの食文化の伝統を守ろうという若者たちが増えています。
高校にはそば部があり、熱心な部員たちが、日々、そば打ちの技を磨いています。
指導するのは、地元のそば店のご主人。忙しい店の仕事の合間を縫って、高校生たちに、地元に伝わる打ち方を指導しています。
ときには群馬県など他の地域から、そば打ちの上手な高校生を招き、その技術を勉強します。
こうした機会を通じて、県外のそば処とも交流が深まり、新しい時代のネットワークが育っています。
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そば部で腕を磨いた高校生が、昨年、初めて、「全国素人そば打ち名人大会」に出場しました。
23年続いた大会でも画期的なことで、福井のそばに新時代が到来したと、地元の人たちは喜んでいます。
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こうした若い力が、日本一おいしい「福井在来」の味を守っていくのですから、福井のそばのおいしさは、さらに磨かれていくことでしょう。
福井を訪ねて、小さな町の小さなそば屋さんで、その味を楽しんでください。

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