HOMEMagazine在来種の蕎麦が、おいしい理由 > 旅ゆけば、こそば

82B182BB82CE94E0.jpg

89938Ci.jpg

入り組んだ谷がずっと奥まで続く。この地域も過疎の問題に悩んでいる。耕作されなくなった水田は荒れて、地滑りの原因にもなる。蕎麦が地域を救えればいいのだが。

新潟県の妙高山麓に、細々と受け継がれる蕎麦の名は「こそば」。
蕎麦とは本来こういう味だったと、教えてくれる貴重な「在来種」だ。

 昨年の春、「おいしい蕎麦が食べたいなあ ! 虎さん、どこかへ連れてって !」という声が、寝る間もないほど仕事に追われている僕の友人たちから、わき起こった。
 そこで、考えた。
 蕎麦がおいしくて、風景が気持ち良くて、温泉も楽しむことができて、なおかつ費用は少なめですむ。東京から一泊二日ぐらいの距離。となると......よし、行くなら、あそこしかないな、という、とっておきの蕎麦処に、みんなを案内することにした。

05945.JPG

蕎麦だけでなく、米も野菜もすべてがおいしい。

 忙しいスケジュールをやりくりして、8人がこの日の旅に参加した。いずれも食に関係する仕事に携わるプロフェッショナルたちだ。ちょっとやそっとのおいしさでは納得しないグルメ揃い。半端なものを食べさせるわけにはいかない。彼らは果たして、この蕎麦の味を、どう評価するのだろうか。僕にとっても、それは興味深いことだった。
 今回は、その様子をお話ししながら、極め付きのおいしい蕎麦をご紹介しよう。

04351.jpg

この地域には、蕎麦打ちの上手な女性が多い。

 時は5月の連休あけ。西武池袋線、大泉学園駅の駅前広場に結集した蕎麦好き8人は、2台の車に分乗して東京を後にした。
 関越自動車道を走ること3時間半。車窓には若葉色のきな粉をまぶしたウグイス餅みたいな山々があらわれる。そのおいしそうなたたずまいを横目で見ながら、車内はこれから味わう蕎麦の話で盛り上がる。
 新潟県の中郷インターチェンジで国道に下り、292号線を10分ほど走ると、目的の蕎麦屋「こそば亭」に到着だ。周辺に広がる水田は、ちょうど田植えの真っ最中。車を下りると、新緑の香りを漂わせる風が、肌に気持ちいい。

04344.jpg

太い麺棒を一本だけ使って打つ。

 さて、この「こそば亭」だが、ちょっと見たところは特に変わったふうもない。地方の町へ行くと、どこにでもありそうな小さな蕎麦屋だ。開いているのは、お昼の2時間だけ。20ほどしかない座席は、ほとんど常連客で埋まる。
 僕たちが到着したのは午後2時半。お昼の営業を終えて、一般のお客さんは帰ったあとだ。事前に予約しておいた僕たちは、「ぐぅ!」と鳴るおなかを片手で抑えつつ、のれんをくぐって、蕎麦の香りが漂う店内に足を踏み入れたのである。

04358.jpg

この地域では、昔から蕎麦打ちが盛んだ。江戸蕎麦に比べて、太い蕎麦に仕上げる。噛んで蕎麦の風味を楽しむ食べ方だ。蕎麦粉が素晴らしいから、自然にこういう食べ方になる。

908593c82C997A782C2490l.jpg

意識の高い農家は、ほとんど農薬を使わないため、小さな生き物がいっぱいいる。森に囲まれた水田は自然植物園といった雰囲気だ。







05990.JPG

野草をかじってみる。懐かしい味だ。

05980.JPG

口に広がるすっぱさに、子供のころの思い出がよみがえる。