HOMEMagazine2012年蕎麦Web博覧会 > 蕎麦のソムリエ講座、開催しました 『焼畑で「こそば」を育てる』

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 だいたいの様子は『蕎麦Web博覧会』の中の、「焼畑の暑い夏と、小さな蕎麦屋の物語」の記事で紹介していますが、ここでは、より詳しい報告を、させていただきます。
 この講座に参加したかったけれど、お住まいが遠かったり、スケジュールの関係で参加できなかった方もいらっしゃったと思います。そういう方は、ひとまずこの報告をお楽しみいただき、またの機会に、ぜひ、ご参加をご検討ください。

 今回行った焼畑の講座は、とてもリスクの多いイベントでした。
 実施日はもちろん、前日にでも雨が降ったら、ソバの種蒔きはできなくなります。ソバは、必要以上の水には、とても弱い作物なのです。蕎麦のソムリエ講座を受講されている皆さんは、とうにご存知のことですが。

 南の海上で生まれた台風の動きを、毎日、気にしながら、開催日を待ちました。
 でも、全員の熱い思いが天に通じたのか、当日は晴天! 8月4日の土曜日、たくさんの笑顔が、妙高に集まりました。
 リスクを承知で、お申し込みいただいた皆さん、ありがとうございました!

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 初日の土曜日は、妙高の温泉宿「友楽里館(ゆらりかん)」で、去年も今年もお世話になる「妙高在来蕎麦振興組合」の石野組合長や、『こそば亭』の市村伊佐夫さんのお話をうかがい、ついでに片山が、焼畑のことを、ちょっとだけお話させていただきました。

 昨年実施した妙高の講座では、「懇親会に、もっと時間をとって欲しい」というご希望が多かったので、今回は、しっかりお楽しみの時間をとりました。
 全国から集まった蕎麦好きの皆さんは、妙高の地酒を飲みながら、すっかり打ち解けて、友達がたくさんできたようです。

 窓から夜空を見上げると、満天の星! 明日の種蒔きが楽しみです。

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さあ、翌朝は、6時に宿を出発です。
朝食は、宿が作ってくれた笹寿司。この地方の名物です。
車で30分ほど山中に入って、そこから細い道を上ると、『蕎麦Web』が契約している畑があります。

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去年、参加された方は、勝手知ったる我が畑とばかりに、作業に入ります。
種を蒔く量などを、隣りの区画の人と相談しながら、かなり短い時間で、蒔き終わりました。
今年は、皆さん、ちょっと自信がありそうです。

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それから、再び、車に乗り、また30分ほど移動です。
車は細い山道を、上へ上へと登り続けます。目指すは、焼畑をする現場。道はどんどん細くなり、もうここからは歩くしかないというところまで来ました。みんな車から降りて、さらに10分ほど山道を進みます。

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ようやく畑に到着。畑といっても、ただの山の斜面です。
すでに一週間ほど前に、焼畑を指導してくださる阿部与司夫さんが、草や柴を刈ってくださってあります。しかし、それからしばらく日にちが経過したため、また新しい草が生い茂っていました。
そこで、燃えやすい豆殻を、斜面のあちこちに撒く作業を行います。

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焼畑をする場所の一番上の部分は、ていねいに草を刈っておきます。火が燃え広がるのを防ぐためです。

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まんべんなく豆殻を撒いて、準備完了。

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いよいよ、火入れです。最初はこんな小さな火。ちょっとドキドキしながら、成り行きを見守ります。

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段々、燃え広がっていきます。回りで見ていた人たちの輪が、後ずさりしていきます。

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火力がどんどん強くなり、周囲の緑の草が燃え出します。それを防ごうと、真剣な作業が続きます。眼鏡のプラスチックレンズが炎にあぶられて一瞬で表面が曇ってしまうなど、予想を上回る火力に、緊張が高まります。

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緑の草だから燃えないと思っていたら大間違い。油断していると、すぐに燃え広がります。炎と、緑の繁みの間に立って、延焼を防ぎます。

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上の部分が、ある程度、燃え尽きて、防火帯ができたのを見計らって、下から火を点けます。炎は風にあおられて、一気に燃え上がり、恐ろしい勢いで斜面をかけ上がります。
延焼を防ぐ攻防が続きます。真夏の暑さと、炎の熱さが一緒になって、作業する人を襲います。過酷な労働。これが焼畑です。

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延焼は、なんとか食い止めたところで、急遽、全員集合。まだ燃え盛る畑をバックに記念写真を撮ります。だって、今でなければ撮れない瞬間!
撮影したあと、またあわてて、みんな火を消しに走りました。

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畑の火は、ようやく燃え尽きて、しばらく時間を置いた後、阿部さんが種の蒔き方を指導します。灰の中に種を蒔いてから、鍬で土をかけるのです。

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蒔き方はバラ蒔き。妙高で、昔、行われていた農法です。

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これが、こそば。小粒で風味に優れた、ここにしかない希少なソバです。

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こそばを手にして、一時間ほど前まで炎に包まれていた斜面を登ります。火は消えたのに、興奮は、なかなかおさまりません。

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妙高の深い谷を渡る風が涼しいことに、ようやく気付きました。ちょっと気持ちに余裕ができたのでしょう。

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最後に土をかけるのが大切。でも、種を蒔いたら、もう終わった気分で、鍬で土をかける人は、多くないみたい。大丈夫かなあ。

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細い山道を歩いて、車を置いてある場所まで、戻ります。心地よい疲労感と、初めての焼畑を終えた達成感で、気分は最高。このあと、風呂に入り、おにぎりの昼食を食べて、再会を約束しながら解散しました。お疲れさまでした!

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それから2週間後、焼け跡に、小さな芽がのびていました。

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種を蒔いたあと、まったく雨が降らず、暑い日が続いたので、発芽の成績はあまり良くないけれど、これも自然の営みです。
ソバの栽培は、天候しだい。余分な水は嫌うけれど、まったく雨が降らなくても発芽率が悪い。なかなか難しいものなのです。ソバを栽培している方々の、苦労の一端を知ることができました。

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私たちの畑は、この深い谷の奥にあります。
秋の収穫が、楽しみです。

(焼畑の実施については、地元の消防署に届け出済みです)

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