ごあいさつ

『蕎麦のソムリエ講座』についての、ごあいさつ


『蕎麦のソムリエ講座』の案内人を務めさせていただきます片山虎之介です。私は『サライ』(小学館刊)などの雑誌メディアを中心に、企画や記事を制作する仕事を30年以上続けてまいりました。
 日本や海外の各地で「食」をテーマに取材を重ねていくなかで、それぞれの土地で守り伝えられている食文化は、長い時間をかけて人々が工夫してきた知恵の集積であり、人が自然の中でより良く生きるための、生活技術の原点なのだということを学びました。

 世界に数多ある食文化のなかでも、日本の蕎麦の食べ方は、極めて特殊な部類に入ります。
 蕎麦は「繊細さが持ち味」という個性的な食材です。ほのかな風味を引き出し、それを楽しむ食べ方は、日本人の感性があって初めて成立する食文化であり、その伝統の中には、茶道にも通じる洗練された精神世界を見いだすことができます。

 昔から日本各地で、たくさんの方々が蕎麦について研究、工夫を重ね、様々な答えを探りあててきました。私も取材活動の中で、思ってもみなかった発見や、食文化にまつわるドラマなど、実に多くの驚きに出会いました。目を凝らして見れば蕎麦の世界は、胸ときめかせる感動に満ちているのです。

 蕎麦の世界の感動をお伝えするため、『蕎麦のソムリエ講座』を創設いたしました。この講座は「体験」を重視した講座になります。
 日本でも指折りの名人の打った蕎麦を味わってみたり、実際に畑に立ってソバを栽培してみたりします。
 夏には新潟県の妙高山麓で、「焼畑でこそばを育てる」という極めて珍しい講座を開催して、日本各地から多くの方々にご参加いただきました。

 『蕎麦のソムリエ』講座は『蕎麦Web』が独自に行う講座で、蕎麦についてとことん追求したいという、熱心な蕎麦好きの方が多く受講されています。
 受講生の方が実際に足を運んで、ひとつの会場に集まるので、皆さん顔見知りになり、日本各地にたくさんの蕎麦好きの仲間ができます。
 『蕎麦のソムリエ』の認定を受けるには、これらの体験講座を受講して体験を積み重ねることと、多くの蕎麦の味を体験することが重要です。
 どうぞ、ご参加いただき、蕎麦の世界をお楽しみください。

 そして、もうひとつ。30年以上に及ぶ食の取材の中で、気がかりでならないことがあります。
 それは、ひとことでいうと「食の荒廃」です。日々、私たちが口にする食事の仕方や栄養バランス、食材の流通の仕組み、質などは、ここ30数年で大きく変化しています。「簡便なもの」、「廉価なもの」、「大量に流通する規格化されたもの」たちが身辺に押し寄せる今の状態で、私たちは本当に健康を維持することができるのでしょうか。これから成長していく家族の命を、守ることができるのでしょうか。自分自身の体を作るもとになる食事さえ、きちんと管理する余裕が持てないというのが、現代に生きる私たちの客観的な姿だと思います。

 さらに深刻なのは「生産地の荒廃」です。ソバは、まさにその代表格ということができます。
 ソバを小規模に栽培しても、生産農家は利益をあげることはできません。ですから山間の小さな畑で行われていた、昔ながらの栽培法は、どんどん廃れ、忘れ去られていきます。今では、機械で大規模に栽培する生産地以外、ソバの栽培にたずさわるのは、ほとんどがお年寄りです。
 その方々も、年々高齢化が進み、「ソバを栽培できるのも、もうあと2〜3年ぐらいだろう」とか、「今年の秋は、はたして刈り入れができるかどうか」とまでおっしゃる方が増えています。

 お年寄りが畑に立てなくなれば、今、白い花を咲かせているソバ畑は、やがて雑草に埋もれた耕作放棄地になってしまうのです。
 このようにソバ栽培の現実は、のっぴきならないところまで追い込まれています。

 危機的な状況が日増しに深刻さを増す今、蕎麦の世界の現状を、少しでも多くの方に知っていただき、日本独自のすばらしい食文化である蕎麦を守りたいと思うのです。どれほどのことができるのか、わかりませんが、ソバ栽培に取り組んでいる、ソバを愛してやまない方々の力になりたい、そうした気持ちも『蕎麦のソムリエ講座』を開設した、原動力になっています。

 『蕎麦のソムリエ講座』の概要の説明のページをお読みいただき、参加ご希望の方は、申し込みフォームよりお申し込みください。
 講座を通じて、皆様にお会いできることを楽しみにしております。


案内人/片山虎之介


「蕎麦のソムリエ講座」の片山虎之介が企画、責任制作、解説した
主要メディア掲載記事の一例、及び片山の活動概要。

単行本

蕎麦屋の常識・非常識 (朝日新聞出版)

不老長寿のダッタン蕎麦 (小学館) 
日本にダッタン蕎麦の名前を広めた単行本

真打ち登場 霧下蕎麦 (小学館) 

正統の蕎麦屋 (小学館)

ダッタン蕎麦百科 (柴田書店)
ほか。


サライ(小学館)】 

日本の名蕎麦/別冊付録付き (2004年9月2日号)
本誌45p+別冊20p。合計65pの大特集。北海道から沖縄まで、日本の蕎麦食文化の全貌を紹介。ほぼ一冊丸ごとの総力特集。

蕎麦の正統 (2003年9月18日号)
42pの巻頭大特集。砂場、薮、更科と一茶庵、それに神田まつやを加え、日本蕎麦の代表的名店の歴史と特徴を解説。

名刹でたぐる寺方蕎麦 (2001年9月6日号)
蕎麦の食文化の発祥を訪ねて、比叡山延暦寺、深大寺、戸隠神社、善光寺、妙興寺などに伝わる、寺と蕎麦の歴史を解説。15pの特集。

名君がたぐった大名蕎麦 (2002年1月1日号)
正月号、15ページの巻頭特集。徳川吉宗、保科正之、徳川光圀、松平不昧など、大名、名君が愛した蕎麦を紹介。

霧下蕎麦とその花をめでる旅 (2000年8月3日号)
日本全国の蕎麦処を、北海道から九州まで旅をし、18pにわたり、各地に残る蕎麦の食文化を紹介。その後の蕎麦ブームの発端となった特集。

蕎麦「食べ歩き」の極意 (2009年8月20日号)
蕎麦屋の食べ歩きの仕方を、20pにわたり特集。

極上の年越し蕎麦 (2010年1月号)
日本各地の名店から蕎麦を取り寄せ、自宅で茹でて年越し蕎麦を楽しむ。15pにわたる特集は、今、取り寄せ蕎麦のブームを巻き起こしている。

ローカル列車で旬を食べに行く (2000年9月7日号)
ローカル列車に揺られ、各地の美食を訪ねる旅の特集。表紙に奈良の「玄」の蕎麦を掲載。巻頭17pの特集は、その後、鉄道の旅ブームを巻き起こす。


自遊人(自遊人)】

絶滅寸線。在来種の蕎麦(2010年9月号)
日本各地にわずかに残る希少な在来種を、66pにわたって解説した、ほぼ一冊丸ごとの大特集。大きな反響を呼んだ。

代替わりにドラマあり。暖簾の継承 (2007年7月号)
老舗蕎麦店の代替わりにまつわる、様々なドラマを紹介。神田まつや、並木薮蕎麦など、10p。


週刊朝日(朝日新聞社/朝日新聞出版)】

月桃蕎麦 (2005年9月30日)
蕎麦を極めれば「こそば」 (2007年11月2日)
自家栽培のうまい蕎麦 (2010年12月24日)

そのほか「そば・うどん」(柴田書店)、「蕎麦春秋」(リベラルタイム出版社)など多数。


講演など

●2007年2月24日に、つくば国際会議場で開催された「第7回ソバ研究会」で、片山虎之介が「中国のそば生産地をめぐる情勢」をテーマに講演。それに先立ち、京都大学農学研究科栽培植物起源学分野の大西近江教授が、「ソバの起源地を探る」と題して講演を行った。これを縁に大西近江先生には、『蕎麦のソムリエ講座』の第一回基本講座の講師を務めていただいた。


●福井県福井市で2010年11月5日から7日まで、「2010ふくいそばまつり」と「第16回日本蕎麦博覧会in福井」が同時開催。片山虎之介が基調講演を行った。テーマは「蕎麦のうまさは、どこからくるのか」。