こそばの旨さに大満足の8人は、菜の花に埋もれる奥信濃へと向かった
「蕎麦って、本当はこういう味だったんだねえ、いやあ、驚いた!」
「これ、なあに!? こんなお蕎麦、食べたことない!」
口々に感嘆の声を上げながら、あるいはただひたすら言葉もなく、こそばをいただいた8人。いずれも自他ともに認める蕎麦通の人たちだ。その8人が絶賛したこそば。ソバそのものも特別なものだが、それを生かすことのできる市村さんという蕎麦打ちの名手がいるからこそのおいしさだといえる。
後ろ髪をひかれながら、こそば亭をあとにした僕たちは、一路、奥信濃へと向かった。
奥信濃の長野県下水内郡豊田村(現中野市)は、文部省唱歌の「故郷」「朧月夜」「もみじ」「春がきた」「春の小川」などを作詞した国文学者、高野辰之の生まれ故郷。まさに歌のような風景のまっただ中に立てる場所だ。
春の千曲川のほとりを散策し、菜の花畑に遊び、おぼろ月夜に歌われているような夕暮れの中を走って僕たちは、今夜の宿、野沢温泉の『住吉屋』に到着した。
ここがまた、おかみさんや仲居さんの人柄も良く、料理もおいしい宿。「村のホテル」の別名があるように、派手さはない小さな旅館だが、ほのぼのした気持ちになれる本当の名旅館である。
こそば亭と野沢温泉の旅は、今回参加した全員の心に、忘れがたい素晴らしい思い出を残した。今でも、ふとした折に、あの菜の花畑とつややかに踊る蕎麦の味を思い出し、「また行きたいねえ、こそば亭...」と、誰かがつぶやいたりするのだ。
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野沢温泉 住吉屋
福長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8713
電話0269-85-2005
http://www.sumiyosiya.co.jp/