会津の蕎麦は救われた
会津の蕎麦は救われました。そのことに感謝します。
昨年の原発事故が起こって以来、蕎麦好きの人たちは誰もが、心配で心配でたまらなかったことでしょう。
会津の蕎麦は、どうなってしまうのだろう。
もう二度と、あの蕎麦を味わうことはできないのだろうか、と。
こんな事態になって初めて、会津という土地が、どれほど重要な蕎麦食文化の聖地であったのかということに気付かされました。
それまでは、会津に行けばおいしい蕎麦がいつもあって、食べたいだけ食べることができたので、そういう状態が当たり前のことのように思っていました。
でも、もしも会津の蕎麦が、今後、食べられなくなってしまったらという危機に直面したとき、会津の蕎麦の本当の価値が見えてきました。
あれはかけがえのない、世界に唯一無二の蕎麦だったのです。
日本の郷土蕎麦の神髄ともいえる食文化です。そのことを、魂に焼き印を押し付けられるような痛みとともに、認識させられました。
あれから一年。
会津には再び、緑の季節が巡ってきました。
野に山に花が咲き、小鳥が歌い、いつもと同じ豊かな自然が息を吹き返したのです。
会津の蕎麦は、救われました。
放射性物質については、会津の蕎麦に関わる人たちが、徹底的に検査をして、安全を守っています。国の基準より、はるかに厳しい自主基準を設けて、「会津の蕎麦は絶対に守る」と宣言して、働き続けています。
だから大丈夫。安心して、会津の蕎麦を召し上がってください。
『蕎麦Web』でもご紹介しているように、会津の蕎麦の放射性物質は規制値以下というデータが出ています。でも、しかし、今、会津では、収穫されたソバの在庫が山のようになっている状態です。事故が起きる前までは、大量に買い付けていた商社が、買ってくれなくなったのです。
流通業者は、その品物が安全であるかないかよりも、その品物を仕入れて、もしも売れなかったら大損をしてしまうという理由で、購入しないのです。
会津から蕎麦を仕入れていた蕎麦屋さんなどは、以前と変わらず、仕入れてくださっています。
だから蕎麦好きの皆さん、これからの気持ちのいい季節に、会津を訪ねてください。そして、おいしい蕎麦を、いっぱい召し上がってください。
会津の、世界に誇る貴重な貴重な、蕎麦の食文化が救われた。
今年は一年かけて、そのお祝いのお祭りをしようではありませんか。
「会津の蕎麦、よく帰ってきてくれたね」と、ざるに盛られた美しい蕎麦を、ほめてあげましょう。
そして、そのおいしさに、驚いてあげましょう。
ほんとうに、こんなにおいしい郷土蕎麦は、そうそうないのですから。