南からも北からも、大雨の被害のニュースや映像が目に飛び込んできます。そこに暮らす皆さんは大きな影響を受けて、大変な思いをされていることでしょう。
心から、お見舞い申し上げます。
この異常気象は、蕎麦好き泣かせの天候ということができます。
雨に弱いのがソバの特徴。今年の新蕎麦の出来を考えると、心配で、いてもたってもいられない気分になりますね。
各地にお住まいの「日本蕎麦保存会」の会員の皆さんから、それぞれの土地の現状をお知らせいただきましたので、ご報告いたします。
まずは北から、国産ソバの代表的産地である北海道が、かなり痛めつけられている模様です。
ソバの作付け面積日本一を誇る幌加内町のソバ畑は、8月16日と18日の大雨、強風により、大きな影響を受けました。
作付け面積3200ヘクタールの約7割にものぼる、2270ヘクタールもの面積が、倒伏してしまったとのこと。20日に、幌加内町によって、被害の様子がまとめられました。
倒れたソバは花が咲き、一部、実を付けているものもあります。今後の天候が良くなれば、まだ立ち直る可能性はありますが、刈り入れの作業はしにくくなることでしょう。
天気が早期に回復してくれることを、願うばかりです。
上の写真が、8月30日の幌加内の様子です。
東北は宮城県、秋保でも長雨が続き、播種時期の7月末は、畑にも入れなかったそうです。ずっと雨が降り続き、8月6日に梅雨明けになりましたが、それでも畑がぬかるんで播種ができず、お盆近くに蒔いた農家が多いということです。
これだけ播種が遅れると、収穫時に霜にあう心配があります。先行きが心配ですね。
新潟県の妙高市にある『蕎麦Web』の畑では、雨が降り続いて土が乾かないため、9月6日現在、いまだに播種ができていません。ちょっとの晴れ間があっても、すぐに黒雲が次々に流れてきて、空を覆い尽くしてしまいます。
東京では青空が広がっているのに、信越国境の向こう側は、まるで別世界のようです。
特に深刻な被害を受けたのは、富山県です。電話をかけて様子を聞いてみると、受話器のむこうから聞こえる生産者の声から、ピリピリと緊張感が伝わってきました。
「とにかく、今まで経験したことのない雨なんです。父も祖父も、こんな雨は降ったことがないと、驚いています。雨が粒ではないんです。上から滝のように流れ落ちて、前が見えません。それがずーっと続くんです。あっという間に足下に水がたまって、深くなっていきます。畑がどうなっているのか、想像がつきません」
富山の畑は、やっと双葉が出て2cmのびたと、報告が届いたばかりでした。
こうなると、ソバ畑よりも、生活や命に危険が及ぶ心配があります。これから消防団の活動に出るという返事に、「気をつけて・・」と、祈るような気持ちで電話を切りました。
その後、数日して、電話で聞いてみると、やはりソバは深刻な影響を受けたようです。雨水に一度沈んだ畑のソバは、細くヒョロヒョロとのびて勢いがなく、病気の発生も心配されます。
福井県では、まだ被害の全体像はつかめませんが、若狭や小浜に近い場所の被害が特に大きいようです。
生産量の多い大野や丸岡付近は、蒔き直しをして、なんとか保っているというところです。
今後の天候による影響が、懸念される状態です。
中国地方も大雨が降り続いているとのことだったので、連絡をとりました。
「こちらは豪雨の範囲からは外れていて、ちょうど良いおしめりでした」との返事。ちょっと、ほっとしました。「もう20cmぐらいに、のびています」とのことで、このまま収穫にこぎつければ、なんとかおいしい蕎麦が期待できそうです。
それ以外の地方でも長雨の影響を受けたり、場所によっては逆に、晴天続きで雨が足りないところもあります。
農作物の栽培は、自然が相手ですから、困難に直面しても対応が難しいですね。不順な天候が続くこんな年は、農家のご苦労が痛いほどわかります。
雨で被害をこうむった生産者の皆さんへの、何よりの応援は、蕎麦好きの方が蕎麦屋さんで蕎麦を召し上がっていただくことです。
どうぞ、生産者の皆さんが大切に育ててくださったおいしい蕎麦、楽しんで召し上がってください。