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そば福 (豊岡市)(兵庫県

頑固に伝統を守り通す出石蕎麦
レポート提出者:ライシーンさん

fuku1.jpg出石蕎麦の看板にひかれて暖簾をくぐると、左手に打ち場があり、中でちょうど壮年の男性が蕎麦を打っているところだった。店内を見渡せば、年配の女性、壮年の男性、若い女性の3人で切り盛りするお蕎麦屋さんで、壮年の男性がそば打ちから茹で、盛り付けを担当している模様。年配の女性に小上がりの座敷に案内されながら、お蕎麦のお薦めを尋ねると、出石名物の「皿そば(二八そば)」と「十割そば」で、「十割そば」は注文を受けてから打ち始めるとか。食べ比べしたくて、二つともオーダーしました。

fuku2.jpg「皿そば」は5枚の小皿に二八そばを均等に盛られて出てきました。徳利に入った辛汁と、5種類の薬味(自然薯、生卵、ネギ、大根おろし、ワサビ)も同時に目の前にそろいました。食べ方を尋ねると、まずは辛汁だけでお蕎麦を、あとは5種類の薬味を小皿に乗せてそれぞれの味を楽しむとのこと。さっそく挑戦。まず二八そばだけを口に運ぶと、優しい蕎麦の香りと、少し柔らかめな腰の蕎麦でした。辛汁は甘すぎず辛すぎず、後味がよく、二八そばとの相性もとても良い。次に薬味を小皿の二八そばに絡めて、そこへ徳利の辛汁をかけて食べましたが、自然薯、ネギ、ワサビまでは美味しくいただきました。しかし、最後の薬味として残った生卵を目の前に、どうやって食べるのか困ってしまいました。困惑している私の姿を見かねて、年配の女性が私に「生卵1個を割って二八そばに絡め、そこへ徳利の辛汁をかけて食べるのですよ」と食べ方を指南してくれました。生卵1個を二八そばに絡める食べ方に初挑戦。このような食べ方もあるのかと感激しました。

fuku3.jpg「皿そば」を食べ終わったころに、「十割そば」が運ばれてきました。「十割そば」は、香りが立ち、シャキッとした腰の固さと咽喉越しがあり、とても美味しい。

蕎麦を味わいながら年配の女性と蕎麦の話をしていると、年配の女性がお蕎麦にかける情熱を語ってくれました。それによれば、お店は、彼女と息子と、もうひとりの女性の3人で切り盛りをしているそうで、「出石皿そばの由来は、皿を重ねてお箸の高さと同じになるまで食べたことだと有名になっていますが、本来は田畑の重労働の後だったので、お箸の高さぐらいまでお皿が積みあがるぐらい多くの量を食べたことが本来の由来だよ。」

また、年配の女性はお年寄りが目を光らせているお蕎麦屋さんへ食べに行くと美味しいお蕎麦に出会えることを、次のように話してくれました。「昔は自分の田畑で蕎麦を育てて、自分たちで打って食べていたので、今でも地元の年寄りは本当のお蕎麦の味が分かる。でも、残念なことに、出石蕎麦を出すお蕎麦屋さんは55軒(出石皿そば協同組合加盟店は36軒)あるけど、出石町は今や観光化して良い蕎麦屋が少なくなってしまった。観光客はお蕎麦の本当の味を知らないので、いい加減なお蕎麦でも満足してしまうようだから、本当のお蕎麦を食べられるお店が少なくなったね。」

この女性が昔の味を頑固に守っているのだ、と感心しました。そこで、どのように味を守っているのか尋ねてみたところ、次のように教えてくれました。「私の店では、息子が信州から蕎麦粉を取り寄せ、お店の中で打っている。悪い蕎麦粉は返品して使わないよ。毎日、お昼は私がお蕎麦を食べて、その日の打ち具合、茹で具合を確認しているのよ。辛汁は、昔からの作り方で、材料は、醤油、味醂、お酒、昆布、鰹のみ。砂糖は使わない。昆布は利尻昆布が良いね。ただね、残念なのは、皿そばに乗せて食べる自然薯は、今は北海道産を取り寄せている。地元の自然薯の味が忘れられないのだけど、地元の山では熊が出るので自然薯を掘る人がいなくなって、もう手に入らないのよ。」

頑固に伝統を守り通す女性に、頭が下がりました。田舎のお蕎麦屋さんという第一印象も、女性のお蕎麦にかける情熱話を聞くと、お店の印象が大幅に変わってしまいました。お店を出るときには、いつまでもお元気で、本当の出石蕎麦の味を後世に届けて下さいと、心から願わずにはいられないお蕎麦屋さんでした。

店名そば福 (豊岡市)
電話番号0796-22-6917
住所兵庫県豊岡市泉町6-10
アクセスJR山陰本線 豊岡駅 徒歩15分
営業時間11:00~15:00 17:00~20:00
定休日月曜
平均的な予算(昼)1,000円~
平均的な予算(夜)1,000円~
予約
クレジットカード不可
個室
席数16席
駐車場
禁煙禁煙
アルコール
ホームページ
35.546728,134.82006479999995

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