美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　利根川を神崎大橋で渡り茨城県の稲敷市に入ると、創建767年と言われ由緒ある大杉神社がある。そこから先に250ｍほど道なりに西に進んだところだ。店の前の駐車場の真ん中には熊野神社の小さな祠があり、大きな看板も出ているのですぐわかる。

　屋号は「市場屋」で、その下に「惣左衛門」という屋号はかなり変わった名前なので店主に問うと、「市場が毎日賑うように、お店も賑わって欲しいから」と言って名付けたものと聞く。昔は自動車もなく、大杉神社へのお参りもほとんどが徒歩だったので、その参道にあるこのお店の前も大いに賑わっていたそうだ。現在の店主で四代目なので、１００年を超える地元の老舗だ。

　入口を入ると明るく清潔感のある店内が目に飛び込む。メニューは蕎麦・うどんに酒の肴など一般的なもので、特に奇をてらったものはない。私は月に二回程訪れているが、「おろし蕎麦」を注文することが多い。蕎麦は少し灰味がかった白で普通の太さ。茹ではやや固めである。「おろし蕎麦」は冷たい汁の中に冷たい蕎麦が入り、上にタップリの大根おろしと削り節が乗り、それにカイワレ大根が青みを加えている。汁の色は濃い目で若干辛目である。四季に関係なく、また食欲や体調に関係なくサッパリと食べやすいお蕎麦である。

　箸を下ろして長押を見ると、珍しいメニューが目に入る。短冊より一回り大きな木札に品物に因んだ絵が描かれており、それらが額に入って飾られている。お客様が描いてくれたものらしいが、店に足を運ぶたびに楽しませてくれるので、その一部だがぜひ皆様にも見てもらいたい。