美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

私は愛媛県松山市在住で、松山市内に美味しい蕎麦屋さんはたくさんありますがもっと大変であろう、お隣のうどん県。香川県で営業しているお蕎麦屋さんを応援したくなり、今回もそんなお店をご紹介します。 

まず、店構えについて。外から見ると建物自体は一軒家のように見えますが、入り口にメニューが広げてあり、大きな暖簾もあるため一目で飲食店とわかります。靴を脱いで上がると中は広く、いろんなタイプの席が用意されています。私ひとりでしたので、入り口入ってすぐの大カウンターのある部屋へ案内されました。ガラス越しに庭のみえる明るい部屋で、私以外に先に女性の一人客が座っています。 

メニューを広げると、かなりの種類のお蕎麦があります。一品料理もお蕎麦屋さんの定番を押さえてあり自然と期待が持てます。伝統的なお蕎麦のメニューや店構えをきちんと勉強されている店というのは、店主のお蕎麦に対する真摯な姿勢が伝わってくるようで、食べる前から安心できます。季節限定のメニューも魅力的でしたが、今回はお店の名前がついた「たちばな」というお蕎麦（冷たいお蕎麦を温かい野菜のつけだしでいただく）を選びました。 

今風のデザインの食器に盛られたお蕎麦と広口のお椀に温かいつけ汁がお盆に並んでいます。まずは、何もつけないままお蕎麦をいただきます。結構細身ですがしっかりとしたコシを感じ、歯切れもいいです。香りも爽やかにぬけお店に入った時の期待は裏切りません。

続いて、広口のお椀のつけ汁の中身を見てみると、茗荷(みょうが)・長ネギ・三つ葉・柚子・舞茸・鶏肉が入っています。鶏肉の有無はお客様の要望でいれていたので、精進料理として出せるメニューだったようです。つけ汁は温かく、同割（ざる汁とかけ汁を1:1で合わせた）のような濃い味つけです。しっかりとした鰹出汁に舞茸と鶏肉のうま味も加わり、しっかりした味になっています。食文化の違いからでしょうか、四国にいると茗荷を口にする機会がほとんどないので、その爽やかな味わいにうれしくなります。 

店の方にお話しを伺うと、こちらのご主人は横浜の一茶庵さんで勉強されてきたとの事。なるほど、確か「精進煮かけそば」というメニューが一茶庵にはありました。それのアレンジのようです。以前、同じ香川県で訪れた「まちだ」さんは、長野のおお西さんで修業されていた方でしたし、四国にいながら全国の有名店のお蕎麦が楽しめるなんて、幸せな事だと思いました。蕎麦の勉強を始めたからこそ、こういった事にも目を向けて楽しめるようになったので、今後もさらに知識を深め、蕎麦の世界をより深く楽しみたいと思いました。