美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　和風様式の落ち着いた雰囲気。店の中はゆったりとして、お洒落な造り。障子で間仕切りして、家具などの調度品とのバランスも良い。電灯のややほの暗い明るさで静かさを演出。張り紙やBGMもありません。強いていえば、厨房の調理の音がBGMといえます。二人だけなのにサービスには細心の注意を払っているようです。

　そば屋の酒肴は美味いものと決まっていますが、ひら井は特に優れていると感じました。敏感に季節の変化を酒肴に織り込んでいます。清潔感にあふれている厨房とサービスを2人だけでこなしています。
　栃木県の旭興の本醸造を冷で頼みまました。白磁の片口、猪口ともにデザインがシンプルです。おつまみは3種類、いちじくの酢味噌和え、ゴマ豆腐、たこの足のやわらか煮です。この店の酒肴は実に豊富で美味しい。和食料理の基本技術が無ければ、食材一つひとつが持つ個性を極致とまで言える高みにまで調理し、お客さまに提供できないだろうと思います。 

　もりの量はどのくらいか聞いたところ、70グラムという返事でしたので、追加のお代わりではなく、酒肴のメニューにあったそばがきを頼むことにしました。
　ざるにほど良く盛られたそばを口に含み、一口噛むとそばの風味が鼻に抜けます。のど越し、辛味のつゆ、そばの美味さを堪能できます。そして、そばがきの馥郁たる食感と味わいに満足した口福のひと時でした。