美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　今年の6月、JR阿漕駅の近く（久居へ抜ける街道沿い）にオープンした手打ちそば屋さんです。駐車場完備のおそらく自宅兼店舗、建物は和を基調とした中に現代的でモダンな雰囲気がうまく融合された非常に立派な外観です。たじたじとしながら暖簾をくぐり店内へ。

　 厨房から張りのある3名の声に迎えて頂きました。外の印象にたがわず、すっきりとしていながらも、漆喰とコンクリートの空間の随所に無垢の木（カウンターやひと際目を惹く天井の太古梁等）があしらえてあり、不思議な温かみがあり、尚且つお洒落です。「お好きなお席へどうぞ」

 　３カ月経過したとはいえ、まだどこにも人の手垢がついていないというか、新築に特有の空間そのものが発している空気感のようなものに、かすかな緊張を覚える店内には、妻と私のみ。訪れた時間は18時半頃です。

　しかしながら、赤ちゃんを背中に背負った女性の、にこやかで親切な接客と、テーブルに置いてある良心的な価格のメニュー表に、緊張がほぐれていきます。我々は、おすすめの「夜限定セットメニュー」

　海老天丼と半分サイズのおそばのセット（つけもの付き）￥1480

　かつ丼と半分サイズのおそばのセット（つけもの付き）￥1480

　 おそばは、それぞれざるとかけにして頂きました。

 　厨房からの油の爆ぜる音、そばの水を切る音、食欲をそそる大好きな音です。

　 間もなく、運んできて頂いたそれぞれのセットは、見た目にかなりのボリュームがあり、大変美味しそうです。まずは、ざるそばを頂きます。おそばは兵庫県氷上産、星はほぼなく微粉で打たれた二八のおそばです。程よい太さに切られた麺は、しっかりと茹でられており、食感はやや優しく感じるものの、喉越しが非常によく、喉をすべり落ちた後にすぅ～と甘い香りが鼻腔をぬけていきます。しっかりと茹でられているためか、噛んで味わってみると甘味が口の中にじんわりと広がりました。

　汁は、二週間寝かせたかえしに、鰹本ぶし、鯖ぶし、むろ鯵ぶし、宗田鰹ぶしを削り機で直前に厚削りにし、組み合わせにより、三種類の出汁をとり、おそばにより使い分けをされているそうです。ざるそばのつゆは、塩味の後に複雑な出汁の中から甘味がじわじわと顔を出してくるような印象をうけました。薬味のおろしとの相性がとても良く、するするとおそばが進んでいきす。　　次にかけそばを頂きました。関西風の色が薄目のつゆです。出汁の香りがほわぁ～と混じる湯気とともに、同じく微分で打たれたおそばを手繰ります。出汁の中にやさしいおそばの味を感じます。美味しいです。

 そしてもちろん、セットのメニューである天丼・かつ丼も美味でした。

 　天丼の天ぷらはどれもサクサクに揚がっており、丼汁のからんだあつあつごはんと一緒に頬張れば幸せが口中に広がります。また国産のロース肉のかつ丼も、甘辛い味のしみ込んだサクッとした衣に、とろりと卵がからまり、こちらもごはんとの相性は言わずもがなです。合間合間に、ざるそばをつるつる、かけそばをするする、あっと言う間に、二人とも完食してしまいました。

　感じの良い接客と美味しいお料理で大満足です。

　いつの間にやら、近くの席には男性がお二人、天ぷらの盛合せをつまみに、お酒を嗜まれていらっしゃいました。天ぷらを頬張った時のサクッとした音が我々のテーブルまで聞こえてきます。

 　満腹のはずなのに、締めにおそばを頂くのだろうな...などと考えていると、駅も近いことだし、今度は電車で訪れてみたいなと思ったのでした。帰りの車の中...妻も同感であるとのことでした！

 　これからが楽しみなおそば屋さんです。