私の[蕎麦]の原点'genten'が、この『本むら庵』です。 50年も昔の事です。 荻窪に住んでいた頃、近所にあった『本むら庵』からうちにお客様がいらした時に、出前で、かけそばを頼んで食事をした事を思い出す。 いい所で、育ったなと振り返る。 正式店名は『御免蕎麦司 本むら庵』という。
星が目立つ玄蕎麦の風情が表れている。つるっとした歯応えとが本格的な手打蕎麦のこだわりの40年余の月日を感じる。 薬味は本山葵を自分で擦らせてくれる。それも、大した大振りである。 葱もしゃっきりと辛味を抜いた処理が施されている。 汁は初めの一口は甘いかな?と思ったが、蕎麦と共に食べるといい具合になる。出汁が効いているのだろう。 蕎麦湯はさらさらの栄養分豊富なドリンク。 片山先生の教えで、先ずは「せいろそば」を頼んだら、山葵や葱の薬味、蕎麦汁も酒のつまみになっている。 大箱のお店なので、注文をする時は、ファミレスの様に、ピンポンのスイッチが置いてある。直ぐに、店員さんがやって来る。 店頭では、職人さんが蕎麦を打っているのが、硝子越しに見れる。子供達は真剣に魅入っている。 魔法を見ている様だね!粉が団子になって、のさせて、板になり、包丁で切られて、麺になる。不思議ですよね。 BGMはなし。 サッポロ黒ラベル 剣菱 杉樽 冷酒 枡で出てくる。 お代わりをする時と、空になった枡に、一口銚子で溢れる酒を注いでくれた。 花番さん曰く「お代わりは大盛りよ」と受皿にも酒が満たされる。お口からお迎えです。 そして、塩も。お通し ソバの実あられ 香ばしいく、カリカリとあられですね。軽く塩を振って爽やかになっている。つまみに入ろう。菜の花の辛子和え
お見事!の一言です。菜の花の茹で具合と言い、 花カツオのたっぶり観と言い、辛子のつーーんと効くのが堪らない。 牡蠣の松前焼き広島産の大振り牡蠣を利尻昆布の上で生醤油で味付けしてあるとの事。 牡蠣の旨みが凄い!すだちをちょいとかけたが、柑橘の風味が引き立って、更に旨味が増す。 牡蠣を食べ終わった後、利尻昆布を細切りにして、供される。牡蠣の旨みと昆布の風味が更に後を引く。
2013/3/2の事です。
清算を終えて、ご馳走様でしたと店を出た所で、店の裏口から入ろうとする女性を見かけた。直感で、ここのお女将さんだと思い、声をかけてしまった。「お女将さん」でしょうか?と。
私、子供の頃からのこの本むら庵との付き合いがある旨と出前時代を知っていて、私の蕎麦の原点であると伝える。そして、出前の蕎麦屋から石臼手打蕎麦の店売り専門に改革した小張信男さんの話を聞かせ頂いた。
お女将さんは今年、80才になり、嫁いだ時は、蕎麦が余り好きではなく、お姑さんから、大丈夫かしらと心配されていたとの事。今は毎日蕎麦は食べているとの事。お肌も艶艶で言葉もはっきりと、とても元気なお婆ちゃまでした。ご主人の小張信男さんは、提案すると、「よし、すぐやろ」と行動派タイプの方で、お女将さんは少し考えてから、提案をする様にしていたとの事でした。この行動派タイプだから、出前蕎麦屋から石臼手打蕎麦の店売り専門に転換し、更に、ニューヨークにも六本木にも出店する革命児なのでしょう。
出前の蕎麦屋から変身する時には、大変なご苦労があった様で、それまでのお馴染みさんから、「大丈夫かよ?」と心配されていたそうです。店の花番や会計、店作りの心労で眠れない夜が続いたとの事。長男がニューヨークの店をやり、今は六本木の店を見ている。荻窪の店は長女夫婦が、自発的に店を継ぐと言い出してくれた。小張信男さんは、継がせる事には消極的で、後から、「嫌々継いだ」と言われるのは、とても不甲斐ないと思っていた様です。
それが、自ら、長女夫婦が、「継ぐ」と言われ、きっと嬉しい事で、ホッとした事であったと、私は想像しました。蕎麦業界の要職も務めあげ、今の蕎麦の礎を築き上げた大事な仕事を成し遂げた方です。
後継が出来て、これからは『好きな事をするんだ』と言っていた矢先の出来事です。たった、一週間後の出来事です。その小張信男さんが、ちょっと腹が痛いと言って、入院。そのまま、退院はされませんでした。
お女将さんは、今はあの世で「好きな事をしている」でしょうとおっしゃっていました。お墓は近くの光明院なので、命日とは限らず、不安な事が起きると、お墓にお参りして、「どうしたら良いかしら?」と問いているとの事でした。その目には薄っすら涙が滲んでいました。とても、貴重なお話を聞かせていただきました。
店名 | 本むら庵 |
---|---|
電話番号 | 03-3390-0325 |
住所 | 東京都杉並区上荻2-7-11 |
アクセス | JR荻窪駅 徒歩10分 |
営業時間 | 昼ー夜 11:00-21:30 ラストオーダー 21:00 |
定休日 | 火曜日 祝日営業 翌平日休業 |
平均的な予算(昼) | 1000円 |
平均的な予算(夜) | 3000円 |
予約 | 可 |
クレジットカード | 可 |
個室 | 有 座敷 広間 20席 個室 10席 テーブル席 52席 |
席数 | 82席 22卓 |
駐車場 | 有 |
禁煙 | 禁煙 |
アルコール | 有 |
ホームページ | http://www.honmura-an.co.jp/gaiyou/ |