匠は秋葉原に流れる神田川の南側にあります。
もともと開店当時は、松翁の看板があがっていました。猿楽町、松翁で修業された今のご主人が独立して匠になりました。神楽坂、蕎楽亭のご主人と兄弟弟子になるんですね。
入口は黒と白を基調にキリリとした江戸情緒を感じますが、中に入るとモダンな壁のデザインが広がり、都会的なセンスを感じるお店です。
入って右側に八人掛けのテーブルがドーンとあって、左側には四人掛けのテーブルが二つだけの小さな蕎麦屋です。奥が調理場になっています。カウンターには、色々なお酒と創作料理のメニューが貼ってあり、「夜も美味しいお酒と料理でもてなします」って言っているようです。
お昼前に一人で出かけたのですが、入店して空いているテーブルに座ろうとすると、すかさず、若い女将さんが「テーブルにどうぞ」と気持ちよくたしなめます。お昼時に一人でテーブルに座ろうとした私が馬鹿でした。
メニューを開けると先ず目に飛び込んできたのは、「常陸秋そば100%つなぎを使わずに仕上げる生粉そば(十割)、 山葵 湯ヶ島産 本山葵」とあります。そこで期待をしつつ、「ざると田舎の合いもり」950円を注文しました。
(メニューでは「ざる」とありますが、以下の感想では、黒い「田舎そば」に対して、白っぽいそばを「普通そば」と区別して使います)
「合いもり」は、ざるの上に「普通そば」の山が二つに、対角にクロスになるよう「田舎そば」の山が二つと、四つのボッチ盛りにして出てきます。これは、松翁の「合いもり」や、享楽亭の「二色盛り」と同じスタイルです。ランチタイムなのだからか量は申し分ないです。
出されてすぐにわかるのですが、色の違いはあるものの、田舎そばも普通そばと同じ細切りに切られていることです。香りはこの時期(8月初旬)にしては、良い方だと思いました。しかし、そば切りはやや不揃いで、食べてみると、案の定、普通そばも、田舎そばも、一本一本に麺のこしにばらつきが感じられます。
田舎そばは、まさしく濃い灰色で、細切りにも関わらず、よくつながっていました。口に入れると舌に若干のざらつきを感じますが、歯を入れると、もちっとした感覚と共に、香りが気持ちよく鼻に通ります。蕎麦の味も多いに感じられ、本当に良い粉を使っているんだなぁと思いました。 一方、田舎そばが、あれだけの粉を使っているのだから、普通そばもさぞかし美味しいんだろうと思いつつ食べてみると・・・。普通そばの方は、残念ながら、少し硬い! もちろん、田舎そばに対して喉越しはあるものの、その硬さから、自ら、そばの中に秘める香りも味もすべて封じ込めているようです。もぐもぐ、噛んでみると、やはり、田舎そばにも負けない、香りと味が出てきました。「もう少しだけ、茹でてくれると、うれしいなぁ♪」とついつい小さく鼻歌が。そうすれば、スルスルっと喉越しを楽しみながら、香りも鼻に抜けていくことでしょう。
また、良く水が切れているせいか(それはそれでうれしいのですが)、1つめの山はスムーズにいただけたのですが、2つめ以降は、山をお箸でくずしながら食べました。戸隠のボッチ盛りは水を切りませんが、そういう理由もあってのことかもしれません。
お汁は醤油が際立った濃くて若い感じです。蕎麦を付けて食べるには、「どっぽり」タイプではなく、先っぽ「ちょっこし」タイプです。山葵はメニューの自信の通り、素晴らしい香りでした。ネギは薄くスライスして水にさらしてありますが、さらしすぎて香りもありません。蕎麦湯は、わざわざ蕎麦粉をお湯でといて作ったドロドロしたものです。私は鍋からすくったサラッとした方が好みなのですが、これはこれでお汁で割らなくても美味しくいただけました。真面目な仕事は決して良い仕事では無いのですね。
ランチタイムは、本日の「ごはんもの」100円が追加で頼めるので、おそばだけではちょっと物足りないサラリーマンには嬉しいサービスです。季節によって、「ちりめんじゃこ」、「うめ」、「山菜」などを入れた様々な「まぜごはん」や小丼になります。
それと、「手打ち ひやむぎ」という夏限定メニューがありました。その横に「むぎめおと」というメニューもあり、これは、松翁や享楽亭にもある、蕎麦とひやむぎの「合いもり」です。蕎麦だけの合いもりは、ボッチ盛りでしたが、こちらは、名前の通り、夫婦が横たわるように(?)縦に二列に並んでいます。「ひやむぎ」は、まだ、いただいてないのでこの次のお楽しみです。
夜は、松翁直伝、白魚、穴子、車エビの天ぷらが美味しそうです。カウンターのど真ん中にドーンと(小さな)水槽があり、中には、車エビが生き生きと泳いでいました。女性なら、「これ揚げて!」って言いづらいかも。
帰りにカウンターの奥に電動石臼があるのを見つけましたが、どうやらフルに稼働しているとは思えませんでした・・・どうでしょう?
私は実はオープン当時に一回、その後に二回、そして、今回が三回目の来店と一年毎に伺っているんです。そして、ここのお蕎麦がどんどん進化してきていることを知っています。一年後にはどんなお蕎麦になっているか? 夜はどんな雰囲気でお蕎麦を食べさせてくれるのか?老舗の技と工夫を伝承しながらも、どの様な独自性を打ち出し、お客さんを喜ばせるか?これからが本当に楽しみなお蕎麦屋さんです。
店名 | 手打ち蕎麦切り 匠 |
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電話番号 | 03-5256-5670 |
住所 | 東京都千代田区神田須田町 2-25-2 |
アクセス | JR秋葉原駅 昭和通り口より徒歩5分 地下鉄岩本町 A2出口より徒歩1分 |
営業時間 | 月~金曜日 昼 11:30~14:00 夜 17:00~22:00(LO 21:00) 土曜日 昼営業のみ |
定休日 | 日曜日・祭日 夏季休暇8月11日~19日 |
平均的な予算(昼) | 昼 1000円 |
平均的な予算(夜) | 夜 3000円 |
予約 | 可 |
クレジットカード | 不可 |
個室 | 無 |
席数 | 16 |
駐車場 | 無 |
禁煙 | 時間帯禁煙 |
アルコール | 有 |
ホームページ | 無 |