美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　今回は本格的な更科そばを楽しむため、自家製粉も行っているこちらのそば屋を訪ねた。整備されたお洒落な街並みの中に独特な趣のある外観が現れる。中に入ると思った以上に明るい店内で居心地が良かった。

　まずはさらしなそば、季節のかわりそば（菊切）と冷やおろしそばを注文した。季節のかわりそばは季節によって柚子切りや、よもぎ切り等に変わるそうだ。メニューは大きく分けて、真っ白なさらしなそば、色の濃いもり、田舎風の太打ちそば、季節のかわりそばの４つある。「本日の蕎麦」との掲示に北海道川上郡弟子屈町産のキタワセとあり、おそらくもりと、太打ちそばに使用されていると思われた。つゆは甘口と辛口があり、それぞれのそばに合ったつゆが付いてくるようだった。

　さらしなそばは真っ白で、透き通っていた。綺麗に切り揃えられた細い麺が美しかった。
　そばのでんぷん質独特の甘みが感じられ、弾力があり歯切れも良かった。つゆを付けなくても十分に美味しいが、柔らかな口当たりの甘口のつゆとは相性が良く、舌触りも良かった。

　季節のかわりそばは菊切とのことで少し苦手な味だろうかと思ったが、口に入れた途端、爽やかな菊の風味が広がり、心地良かった。ちょうど良いバランスで打ち込んでいるのか、しつこくなく最後まで飽きずにいただけた。更科そばだからこそ、色も映えて打ち込まれた食材も引き立つことが分かった。

　冷しおろしそばは麺の色が濃くて青く、しっかりとした風味・味が感じられた。つゆをかけて食べるタイプで大根おろし、鰹節等の具と混ぜたが、さっぱりと食べられる上に、つゆに負けないそばの風味が印象的だった。

　ここまでの３品が予想以上に美味しかったため、最後に季節限定の十割そばを追加でいただいた。今まで出てきたそばと比較して麺が太く、しっかりとした角の立ったそばであった。
　口に入れると良い香りが広がり、絶品だった。コシや歯応えがあり、細挽きのためか、つるみもあった。ボソボソとした食感は一切感じられず美味しくてただ夢中に食べてしまった。材料にこだわり、素晴らしい技術をもって出来上がるそばだと思った。

　外国からの旅行客も訪れていて、英語で書かれたメニューも置かれていた。そばの他にも一品料理等のメニューも豊富であったため今度はゆっくりと夜に訪れてみたい。