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神田まつや(東京都

存在感のある蕎麦・やさしい汁・カレー丼まである蕎麦屋の王道
レポート提出者:やまかけさん

■  いただいたもの
・ビール大(キリン・クラシック)\700:3本IMG_0381.jpeg
・御酒(ぬる燗)\650:1合
・焼き鳥 \750:タレ2、塩1
・ゆばわさび \650
・うに \650
・親子煮 \1,000
・鳥わさ \650
・にしん棒煮 \750
・もり \600
・(天ぷらそば \1,900:これは連れがいただいたもの)

 レポート第3弾は、これまた江戸蕎麦界のもう一つの頂点、神田まつや、だーっ。食味鑑賞直後にレポートの下書きをするので、酔っ払ってますです、はい。この日は連れとうかがったので、酒と酒肴を山ほどとってしまいました。恥IMG_0382.jpegずかしくて、とても、食べたもの全部については書けませぬ。

 神田淡路町の交差点から靖国通りを東に2ブロック進んだ左手、大正・昭和の趣を残す木造二階屋が神田まつやだ。引き戸を開けて店内に踏み込むと、金曜日の夕刻、夏場なので、まだ明るいけれど、店内は既にかなり盛り上がっている。

 このお店は、揃いのグレーの服を着た花番オバさまチームが、ゆったりとした余裕をみせながら気配りよく勘どころを押えた客あしらいをしてくださる。われわれが入店した時も、店内はかなりのタテコミ状態であったにもかかわらず、すぐに柔らかな笑顔で応対され、ちょうど先客が席を立って空いたテーブルに案内してくださる。これ、混んでいると、老舗の神田の藪あたりでも、花番さんがオロオロしたりキリキリした顔つきになってしまうことが多いように思うのです。

 席につくと、まずは箸袋入りの割り箸が目の前に置かれる。箸置はない。箸袋の裏には、「当店のおそばは全部手ご主人.JPG打でございまして、つなぎには鶏卵を使用してございます」と記されている。なるほど。さて注文。まずは、ビール大瓶。キリンかサッポロかを選べるが、キリンにする。キリンはクラッシク・ラガーなのが嬉しい。

 肴は、名物の焼き鳥と、湯葉わさび、ニシン、うに。あとで、親子煮、鳥わさを追加。
ビールにはそば味噌がついてくる。甘いややネトッとした味噌に炒った蕎麦の実が入っている。日本酒には合うかもしれないが、ビールには、ちょっと甘すぎるかも。

 焼き鳥は塩とタレから選択。蕎麦屋なんだから、やっぱタレでしょうと、タレを選択。が、結局、これが旨くて旨くて、さらに塩とタレを追加して、都合3皿を平らげることに。串に刺さっていない、ちょうど良い一口大の鳥肉が山盛の皿。ほっこり柔らかで噛むとジューシーな汁が口いっぱいに拡がる。タレは甘すぎず、べとつかず、砂糖と味醂が控え目な、さすがあっぱれ蕎麦屋のタレ。これ、旨くて、かつ後口があっさりしていて、腹にもたまらず、食べ始めると止まら写真.jpgなくなりそう。

 焼き鳥で酒盛りしていると、ご当主が、店内からよく見えるガラス張りの蕎麦打ブース(板前と呼ぶらしい)に入り、蕎麦を打ち始める。大柄で、江戸前の顔立ちの、いい男っぷりの四代目。捏ねた蕎麦のドウを手で丸く平たくのばしたかと思うと、棒で薄く延ばしていく。見る間に布のようになった蕎麦を畳んで切る。ズクッ、ズクッ。思ったより大きな音がするものなのですね。切られた蕎麦は、さらさらとした細目の麺線になって生舟に納められ、さらにもう一本、延しが始まります。あー、あの打ちたての蕎麦がいただけるのかなぁと期待感で胸はふくらみ、酒はさらに進みます。

 でも、本当は、打ちたての蕎麦をすぐに茹でたのではソラ煮えになって旨くないのだとか。夏場でも打ち上がってから30分は休ませた蕎麦を茹でるのが本来なのだそうですね。今日は、とくに混んでいるので、閉店まで蕎麦が無くならないよう、追加の蕎麦を打っているのでしょうか。

 二人でビール大瓶2本をあけてから、連れはビール3本目、私は日本酒ぬる燗に。袴をつけない素の白い徳利に、小振りの、口をすぼめてチビチビと酒を啜るタイプの猪口。ゆっくり飲めよとの心遣いか。お酒は銘柄不明。爽やかな感じの、たぶん本醸造。かすかに杉の香。ここでもやはり菊正宗なのでしょうか。

 チビチビ呑んでいると、ますます立て込んできて、相席客で席もぎっちり。昼休みの学食状態。それでも、注文はどんどん通るし、お品もどんどん出てくる。まったく滞りなし。恐るべしベテラン花番チーム。だから御当主もそば打ちに専念できるのですな。

 さて、さんざん呑み食いしてから、ようやく蕎麦を注文。私はもりそば、連れは天ぷらそば。
蕎麦が届いてやっと気づいたが、このお店は、膳盆やら徳利の袴やらグラス敷やら箸置きやら、一切「敷物」は使わず、食器を卓に直に置く方式を徹底している。もりそばのせいろも卓に直置き。ソバの水切れには自信があるのですね。

 せいろに盛られたもりそば。鶏卵つなぎの手打ちソバ。分量は、藪より心持多め。ひと水切れた中細麺、並粉色、しっかりとした食感、歯で噛まないと切れないが、軽く噛めばサクッと切れて、飲み込み易いソバ。並木藪ほど細くない、蓮玉庵ほどは太くない標準サイズの麺線は、口触り喉越しに、四角い断面のソバの寸法・形態と量感を感じさせる。存在感のある蕎麦。

 お店のオフィシャルサイトによれば挽きぐるみの蕎麦粉を使っているとのこと。十割なのか割粉を使っているのか、それは私には分からないが、小麦粉が入っていることを感じさせない食感と風味。ものの本には外ニと書いてあったりするのだが。

 汁は、尖ったところのない穏やかな塩味と甘みと酸味とダシの味わい。柔らかなフワッとしたやや甘い、濃すぎない汁。ほとんどダシの匂いは感じられない。さっきの焼き鳥と同じ味。麺をたっぷりと汁につけてもおいしくいただける味加減。そういえば。汁は徳利ではなく、直接、蕎麦猪口に入って来る。つまり、ソバは水が切れているので、いくら汁につけても汁が薄まらないという自信の現れか。あるいは、汁は小出しにせず全部いっぺんに猪口に入れ、ソバを汁にたっぷり浸けて食べてくれ、というメッセージか。実際のところ、ひと水切れたこのソバは、そのままでは、やや喉の滑りが悪いのだが、たっぷり汁をつけて食べると、良い喉越しを楽しめる。

 さて能書はそのくらいにして、どんどんソバを手繰ろう。ツツつつ、サクッ、スルッ、ツツつつ、シュパッ、スルッ、......ムフーッ。

 最後に蕎麦湯で汁を割っていただく。熱い蕎麦湯で割ると、柔らかなダシの香りがフワッと立ち昇る。燻製臭ではない、やさしくてほのかに甘い鰹ダシと醤油・味醂の混ざったほのかな香り。

 存在感があって頼りがいのあるお父さんみたいなソバ、やさしくてきれいなお母さんみたいな汁。幸せな家庭に帰った子供のように心なごむひとときをありがとう。
ごちそうさま〜。また来ます。

店名神田まつや
電話番号03-3251-1556
住所東京都千代田区神田須田町1-13
アクセス東京メトロ丸の内線・淡路町駅(A3出口)・徒歩約1分
営業時間 11:00-20:00(月〜金) 11:00-19:00(土・祝)
定休日日曜日(祝祭日は営業)
平均的な予算(昼)2000円
平均的な予算(夜)2000円
予約
クレジットカード不明
個室
席数テーブル席66
駐車場
禁煙不明
アルコール有(ビール、日本酒、ウィスキー)
ホームページhttp://kanda-matsuya.jp/
35.6962279,139.76892470000007

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