場所は上野駅正面口から隅田川方面に向かう浅草通りにチョット入った右側で、都会の喧騒の中でそこだけスッポリ昭和が残っている一軒だ。暖簾をかき分けて中を覘くと「いらっしゃい~」と明るい声で迎えられる。右に今は珍しくなっている食券販売のカウンターがあり、基本的には食券による注文である。脇には二階に上がる階段がある。
私は、空いていれば必ず一階の壁際の席に着く。ここに席を取るのは、腰壁の上には額に入った色紙などが無造作に飾られており、ここに書かれた噺家さん達の洒落の利いた謎掛けや、棋士の書いた詰め将棋の例題、タレントさん達の褒め言葉などを読んでいると、お蕎麦が来るまでの時間が短すぎると感じるほどの、ただ眺めているだけで楽しくなる空間があるからである。
私の注文は、殆んど「ねぎせいろ」である。周囲を見渡しても3分の1は「ねぎせいろ」を注文しているように見える。せいろの脇に、熱い汁の中にねぎとイカとねぎを刻んだ「かき揚げ」が入った小鉢が付いている。先代店主の考案と聞いているが、単純なのに少し甘めでこくのある汁にしている、気の利いた一品である。蕎麦は一般的な太さで色は白い中にわずかに緑色を感じる。茹でも中庸である。蕎麦の上を箸で均しながら、数本を手繰って汁を付けずに先ず一口。薄い香りと甘みを感じる。少し時間がたち汁付きが良くなってから味わうのも一法と思っている。
周囲を見ると、昼でも一杯やっている席もある。最近では、本格的な豪華なセットメニューを用意しているお蕎麦屋さんもあるが、ここは昔ながらのシンプルなつまみである。板わさ・油揚甘辛煮・かつ煮に天ぷらの類で、お蕎麦屋さんの常である一息ついてサット蕎麦を手繰って出て行く・・・長尻の客はあまりいないようだ。
今日も額を眺めながら板わさに一本付けて、次に「ねぎせいろ」をサット手繰って「ごちそうさまでした」と出て行くのである。
店名 | 翁庵 |
---|---|
電話番号 | 03?3831?2660 |
住所 | 東京都台東区上野3-39-8 |
アクセス | R上野駅正面口、地下鉄(銀座線、日比谷線)東京地下鉄ビル出口から徒歩1分 |
営業時間 | 11時~20時 |
定休日 | 日曜日、祝祭日 |
平均的な予算(昼) | 700円~1,200円 |
平均的な予算(夜) | 2,000円~3,000円 |
予約 | 不可 |
クレジットカード | 不可 |
個室 | 無 |
席数 | 32席(1階) |
駐車場 | 無 |
禁煙 | 喫煙可 |
アルコール | 有 |
ホームページ |