夫婦で玄関をくぐったら、妻の第一声は「わー、ステキ~♪」(言葉に音階をつけるなら、「ファー、ソラシド~♪」)。妻の声が上ずっています。
なぜなら、店内はまるでイタリアンレストラン。平底フライパンが壁に掛けられ、ワイングラスが棚からぶら下がり、黒板に白いチョークで本日のメニュー・・・女性ばかりではなく、ちょい悪オヤジの心もくすぐるオシャレなお店です。店名も、入口横と店内の黒板にさりげなくローマ字で「soba Coneri」と書いてあります。
でも、店内をゆっくりと見渡せば、ここは正真正銘のお蕎麦屋さんだと理解できます。玄関の横には打ち場があり、ボードには白いチョークで「本日 群馬県産常陸秋蕎麦 秋新蕎麦十割」と書いてあります。
さて、テーブルに落ち着き、どんなお蕎麦を出してくれるのかな、と期待してメニューを覗くと、「赤いつけそば トマト仕立て」、「白いつけそば クリーム仕立て」という変わり蕎麦のメニューが目に止まりました。そこで、私は「白いつけそば クリーム仕立て(1,050円)」、妻はお店の方のお薦めで「日替わり天せいろ(1,150円)」をオーダーし、さらに、蕎麦鑑定士受講生の私としては食味の基準「せいろ(650円)」もオーダー。お店の女性が「お出しする順番はどうしますか?」と心配りも。せいろを先に、妻には日替わり天せいろを出来上がり次第出してもらえるよう頼んで、待つことに。
厨房を覗いていると、若い店主が手際よく蕎麦を茹で、平底のフライパンで海老や野菜を揚げています。蕎麦の茹で時間を正確に測っていることがタイマーの音で分かります。平底フライパンなので、揚げ物にすぐに火が通っている様子です。
まず、せいろが運ばれてきました。つやのある細切りの麺で、角が立っています。色はクリーム色。蕎麦だけを口に含むと、蕎麦の香りと歯ごたえが心地よく伝わってきます。十割蕎麦とは思えないほどの歯ごたえで、咽喉越しも良。蕎麦の量も一人前にちょうど良い。辛汁は鰹だしの強いやや甘口。
妻は「日替わり天せいろ」を食しながら、「天麩羅、サクッとして美味しい」と感想を述べていました。
「せいろ」を食べ終えたところで「白いつけそば クリーム仕立て」が運ばれてきました。実は「せいろ」の量は少ないだろうと高を括って2品オーダーしたのですが、予想に反し量が多かった「せいろ」で、すでに私の満腹中枢神経は満足状態に。果たして、食べきれるかなあ・・・と、後悔し始めていたところに、「白いつけそば」が運ばれてきたのでした。
でも、クリーム仕立ての汁を蓮華で一口含んだら、美味い! 空腹神経が再び目を覚ましました。二口目を含みながら、この美味さは何かと全神経を舌に集中して旨み成分の分析してみると、クリーム味の裏には、「せいろ」の辛汁が潜んでいるではないか。そこに、具の鮭とブロッコリーの味が微妙に絡んで、つけ汁の旨みを演出しています。このつけ汁に十割蕎麦をつけると、蕎麦もつけ汁も喧嘩して味が損なわれるのではないかと心配しつつ一緒に食べると、「これは、これは、恐れ入った。美味い!」。十割蕎麦に合う新しい味の発見です。妻にも食べてもらうと、同様の意見。
食べ終えたところで、蕎麦鑑定士受講生として美味しいお蕎麦を提供する若い店主のノウハウに迫るときが来ました。さりげなくお尋ねすると、横浜の一茶庵で修業した先代が東京都町田市のご自宅を改装して開業していたお蕎麦屋さん「ひろじ」がご実家。私たち夫婦は「ひろじ」と聞いて、びっくりして思わず顔を見合わせました。「ひろじ」と言えば、かつて夫婦でお蕎麦を食べに訪ねて行ったけれども、すでに閉店していて残念だったお店。私たち夫婦も若い店主もお互いに「縁があるものだ」と言いつつ急に打ち解け、お蕎麦談義になりました。
若い店主は、先代の父親が経営していた「ひろじ」の影響を受け、南フランスの居酒屋風のオシャレなお蕎麦屋さんを経営したい夢を持っていたとか。確かに「ひろじ」は高級住宅街のなかにポツンとあるオシャレなお蕎麦屋さんで、「ひろじ」のお店の前を通るとフレンチレストランと見間違うようなオシャレな雰囲気を醸し出していました。
若い店主は2013年5月に今のお店をオープンし、お店の名前を南フランス風のお蕎麦屋さんにこだわり「粉練」、アルファベットでは「Coneri」にしたそうです。お店に多くの日本酒と焼酎を置いていて、酒肴はまるでイタリアン料理のメニューを見ているような品々。デザートとして「ガレット」を提供し、お酒の後の締めに十割蕎麦を食べていただきたいとのこと。私たち夫婦は、こういうお店が現れるのを待っていました!
「ガレット」はフランスで食べたお好み焼きで、蕎麦生地にチーズやハムを巻いて食べる料理。蕎麦の味とチーズやハムが絶妙に合う、美味しい料理です。ガレットと聞いたら、空腹神経が再々目を覚ましそうでした。
十割蕎麦の打つノウハウを店主に尋ねたところ、「良い粉を選べば打てますよ」とあっさりした回答。「毎朝、お店の打ち場で打っているので、外から打ち場を覗いてください」とのこと。若くても頼もしい限りです。
「粉練」はこれから将来を担っていくお蕎麦屋さん。お蕎麦屋さんと言えば和風の店構えが多い中で、「粉練」のように女性や若者たちにも好まれるお店づくりを通して、美味しいお蕎麦が世代を問わず広まることを願ってやみません。店主さん、次回は「赤いつけそば トマト仕立て」と「ガレット」を食べに訪れますよ。
店名 | 蕎麦粉練(こねり)(町田市) |
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電話番号 | 042-850-9160 |
住所 | 東京都町田市原町田2-2-1ライオンズマンション町田第六103 |
アクセス | 小田急「町田駅」徒歩10分、JR「町田駅」徒歩5分 |
営業時間 | 昼 12:00-14:00 夜 18:00-23:00 facebookとツイッターで当日の情報を提供 |
定休日 | 火曜。ただし、営業の場合はfacebookとツイッターで情報提供 |
平均的な予算(昼) | 650円~1,500円 |
平均的な予算(夜) | 3,000円~5,000円 |
予約 | 可 |
クレジットカード | 不可 |
個室 | 無 |
席数 | 21席(4人掛けテーブル2卓、2人掛けテーブル1卓、小上がり座席6席) |
駐車場 | 有(コインパーキング利用) |
禁煙 | 時間帯禁煙 |
アルコール | 有 |
ホームページ | https://www.facebook.com/sobaconeri https://www.twitter.com/sobaconeri |