夫婦で、車で移動しながらレストランを探していたところ、お蕎麦屋さんの看板が目に入りました。
看板を見つけて車を降りたものの、お蕎麦屋さんは見当たりません。お蕎麦屋さんの看板の横に構えるお花屋さんの前で、キョロキョロ、ウロウロと、まるで不審者のような挙動をしていたら、お花屋さんの女性店員が「お蕎麦屋さんはこちらですよ。美味しいお蕎麦屋さんですよ。」とお花屋さんの店内へ手招きするではないですか。半信半疑でお花屋屋さんに入っていったところ、見つけました! お花屋さんの奥が、目当てのお蕎麦屋さんです。
お蕎麦屋さんの玄関をくぐると、店内はこぢんまりとしており、席数は18席しかありません。同時に、お酒の一升瓶が所狭しと並んでいる様子が目に入ってきます。私のような酒飲みにはたまらない良い雰囲気です。
席に座ると、お店の方がメニューを持ってこられたので、「このお店の一番のお薦めは?」と尋ねたときに、ビックリ。お花屋さんのさっきの女性店員さんでした。お蕎麦屋さんの店名は「如菴」、お花屋さんの店名は「花如菴」。「な~んだ、同じ経営者じゃないか・・・」と納得。
私たちがメニューを見ていると、先ほどのお店の方が「白だし」と「茶蕎麦のから揚げ」を持ってこられました。サービスだそうで、「白だし」は透明な温かいだし汁で、鰹の上品な香りが心地よく、口に含んで咽喉を通過すると鰹の香りが五臓六腑にしみわたります。「白だし」は枯れ節を中心にだしをとり、辛汁と甘汁のだし汁になるとか。「白だし」の上品な香りを楽しんでいると、自然と辛汁甘汁への期待が高まってきます。
「茶蕎麦のから揚げ」を摘みに「白だし」を飲みながら、このお蕎麦屋さんのお薦めメニューをお店の方に尋ねると「籠城そば」とのこと。「ろうじょう? 戦国時代の籠城?」と反応したところ、所縁を教えていただきました。なんでも西南戦争の時に熊本城を攻めたときの籠城戦で、兵士が石や瓦を熱して食べ物を焼いて食べたのが始まりとか。史実の真偽は別として、お店では一工夫して、熱い陶板の上に茶蕎麦、牛肉、錦糸卵、刻み海苔を乗せたものを、温かいつけ汁にレモンと紅葉おろしを入れて提供しているとのこと。歴史的所縁のある料理や郷土料理に弱い私達としては、さっそく注文して食しました。
陶板に乗っている牛肉と茶蕎麦が、少し甘口で鰹の上品なだしが効いたつけ汁と相性が合います。さらに、レモンと紅葉おろしを辛汁に入れると、味が一変し、酸味と辛みが絶妙に絡み合って、食欲を誘います。特に、焼けた牛肉と少し柔らかめの茶蕎麦とを辛汁につけて同時に口に含むと、得も言われぬ美味しさに襲われます。私は思わず「美味い!」と唸りつつ、「昔の兵士はこんなうまいものを食べたのかな」と歴史に思いをはせ、また、気づかないうちに夫婦とも夢中になって、かつて一緒に訪ねた下関市の「瓦そば」と、目の前の「籠城そば」との繋がりを推理し、「あーでもない、こーでもない」と食の伝来の話題で盛り上がりながら一緒に「籠城そば」をつつきあっていました。
しかし、蕎麦鑑定士受講生としては「籠城そば」で満足してはいけません。蕎麦を語るためには比較の基準となる「もりそば」を食べねば・・・。「挽きぐるみざるそば600円」の文字が目に入ったので、さっそく追加注文。鰹節のきいた上品な辛汁に、二段重ねのざるそばが出てきました。少し柔らかめの蕎麦は、鰹節の香りが鼻腔を刺激する辛汁によく合い、美味しさを奏でています。蕎麦に乗っている刻み海苔を横によけながら、まず、蕎麦だけを食べ、つぎに、辛汁につけて食べ、最後に、刻み海苔と分葱とワサビを一緒に辛汁につけて食べ、お蕎麦の味の変化を愉しみました。2段重ねのざるそばなので、味の変化を愉しむためにはちょうど良い量です。それに、こんなに美味しいのに値段が財布にやさしい。妻も同様に追加注文した「かき揚げそば850円」を食べて、甘汁の味や香り、さらに、お店の雰囲気、値段に満足した表情を浮かべています。
私たちがお蕎麦を食べ終えたところへお店の方が蕎麦湯を持ってこられました。蕎麦湯はさらりとした食感です。蕎麦湯を飲みながらお店の由来をお尋ねしたところ、もともと横浜でお蕎麦屋さんを営み、「籠城そば」を提供していたそうで、2013年9月に今の場所に移転してきたとか。親娘3人でお蕎麦屋さんを切り盛りされているそうで、毎日、お店の打ち場でお父さんは蕎麦を、娘さんは茶蕎麦を打っていて、お母さんはお蕎麦屋さんのお手伝いの傍ら、お花屋さんの経営も担当しているとのこと。微笑ましい家族経営です。
メニューは豊富で、お蕎麦以外にもうどんや揚げ物が揃っています。また、お酒の肴としてお刺身や東京では珍しい福岡の「おきゅうと」がありました。お客さんの中には、一人で来られて「キスの天麩羅」や「鍋焼き」を注文している方がいらっしゃいました。一人でも気軽に足を踏み入れられるお蕎麦屋さんです。小田急電鉄「玉川学園前駅」から徒歩5分ですが、探し当てるのが楽しみ。
私たち夫婦はお蕎麦屋さんを後にしたときには身も心もすっかり満足。微笑ましい家族経営の親娘3人に出会うことができました
店名 | 如菴(町田市) |
---|---|
電話番号 | 042-726-5337 |
住所 | 東京都町田市玉川学園2-7-5 シティ玉川学園1階 |
アクセス | 小田急小田原線「玉川学園前駅」から徒歩5分 |
営業時間 | 11:30-15:00 17:00-22:00 |
定休日 | 月曜 |
平均的な予算(昼) | 1,000円~1,500円 |
平均的な予算(夜) | 2,000円~3,000円 |
予約 | 可 |
クレジットカード | 可 |
個室 | 無 |
席数 | 18席(4人掛けテーブル1卓、6人掛けテーブル1卓) |
駐車場 | 無 |
禁煙 | 禁煙 |
アルコール | 有 |
ホームページ | 無 |