美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　店の小さな看板はあったものの、「本当に蕎麦屋さんなのかな？」と思いながら恐る恐る玄関に入った。「ごめんください。」と言ったら、「どうぞ～」という声が聞こえたので安心し、そのまま進んで、テラス越しに庭が臨める部屋のテーブル席に腰を下ろした。

　富山市八尾にある唯一の自宅蕎麦屋さん、『月のおと』だ。雄上外恵代表が自宅を改装して蕎麦屋を始めてから12年が経過した。ＢＧＭにオルゴール曲≪乙女の祈り≫が流れ、部屋にはピアノが置かれていた。

　おすすめに従って、『月のおと御膳（日替わりです）』を注文する。ざるそば・そばがきの揚げ出し・柔らかこんにゃくの田楽・そばサラダ・日替わり小鉢がセットになって、料金は1300円。

　「おいしいうちに食べて下さい。」とざるそばが出された。さっぱりとした食感と喉ごしに、蕎麦粉の産地をたずねると北海道産ということだった。夏は、さっぱり味の蕎麦がおいしい。お店を始める前に、一茶庵が使っていた捏ね鉢を譲り受け、以来、毎朝その大きな鉢で蕎麦を打っているのだという。

　雄上さんは、また、八尾特産の「そば粉」「桑の葉」「黒ごま」を使った創作メニューで地域のにぎわいに貢献している。最近は和食ブームで、台湾からのお客さんも増え、郷土芸能を楽しんでもらうことも行っている。