このお店は名古屋でも有数のおいしいお店として有名で、私もこれまで3度来訪してよく承知していますが、今回親しい仲間たち4人と夜じっくり蕎麦会席とおいしいお酒を味わう機会を得ました。
外観は小家風の小さな建屋が母屋にくっつく形で入り口となっており、全体に黒っぽい地味な印象ですが、中へ入ると天井が吹き抜けになっていて広々とした開放感があり、壁やテーブル、空間の仕切りの黒っぽい素材、渋柿色のしっかりとした籐椅子と、抑えた室内の照明が相まって明暗を巧みに演出し、店内に独特の雰囲気を醸し出しています。
最初に先付けとして、蕎麦豆腐と焼きなす、フルーツトマトを盛り合わせたものにかつおだしのジュレをかけたものが出てきましたが、それぞれの素材の個性がジュレによってうまく引き出され大変おいしく頂けました。器も貝の形に似た白みがかつた洒落たものでした。
次に椀物で、黒いやや小ぶりの丼の中に冷たい蕎麦が多い目に盛られ、薄口の出しのきいた冷たい汁がたっぷりと張られたものが出てきました。だし汁と蕎麦の風味とがマッチし、また少量のとろろとじゅんさいも入っていましたが、これが食感の小さな変化を楽しませ、夏の爽やかな一品でした。
そのあと、蕎麦の「お造り」ということでしょうか、「蕎麦がき」です。底の浅いすり鉢状の渋い赤茶色の器で出てきましたが、器の色と、蕎麦湯の中に浮かぶ大きめの蕎麦がき、中央にでんと乗せられた生ワサビの緑の塊のコントラストが見事です。これもおいしく頂けましたが、私(わたくし)的にはやや柔らか目でもう少しもっちり感があった方が良いと思いました。
次に「ぐじの松かさ揚げ」です。外縁が銀色、内側が金色で彩色された四角のガラス製の皿に、生の岩のり(?)をたっぷりと拡げその上に主役の身の厚いぐじがかつおだしの餡をまとって、どんと鎮座している風情で今回一番感心した盛り付けでした。
サクサク感のある鱗とほろほろとほぐれてくる白身、そして餡のコンビネーションが素晴らしく、久しぶりに本物の「魚料理」を頂いた感じがしました。
料理の最後は、車海老の天ぷらにコーンの揚げ物が添えられて出てきましたが、海老の甘さと、コーンのさくっとした食感が楽しめました。
そして、見るからにみずみずしく艶々とした十割のざるそばが運ばれてきました。手繰るとちょうど一口分の蕎麦が箸にからみ、盛り付けも神経が行き届いています。蕎麦はほどほどの太さで、啜るとのど越しも良く少しもっちり感もあって蕎麦の風味を一層感じさせます。噛んでもじわっとそばの味わいがにじみ出てきます。辛汁は甘辛のバランスの取れた控え目の味加減でした。
最後にデザートは蕎麦のアイスクリームで、蕎麦の香ばしい風味がしっかりと味わえておいしかったです。以上、値段から見て大変満足のいく会席料理でした。
料理を運ぶ女性従業員の皆さんもはきはきとして愛嬌も良く、「もてなす」という心持ちが態度にうかがわれて好印象でした。
この店の一般メニューは、蕎麦屋としての基本的な麺料理、単品料理は一通りそろえており、値段もリーズナブルで、昼のランチも蕎麦と丼物等を組み合わせたセットメニューが廉価で用意され客が並びます。
そして夜になると、いかにも酒飲み好みのメニューが豊富に用意され(刺身、ウニ、からすみなどもあります)、お酒は「鮮度」維持上あえて銘柄を絞ったおいしい銘酒・焼酎が供されます。
蕎麦の入手・管理(必ず前日に挽く)、供される料理・器、店全体の雰囲気等随処に店主の蕎麦への愛着とセンスが光る名店だと思いました。
店名 | 谷家(名古屋市) |
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電話番号 | 052-561-3663 |
住所 | 愛知県名古屋市西区幅下1-1-11 |
アクセス | 地下鉄鶴舞線「浅間町駅」下車、国道22号線を東へ5分、橋の手前の道を南へ3~4分(堀川沿い) |
営業時間 | 11:30~14:00(LO) 17:00~21:00(LO)売り切れ次第閉店 |
定休日 | 水曜日・第2火曜日 |
平均的な予算(昼) | 1000~1500 |
平均的な予算(夜) | 2000~4000 |
予約 | 夜可 |
クレジットカード | 不可 |
個室 | 有 |
席数 | 約40席(小上がり座敷有) |
駐車場 | 15台(店前7台、店対面駐車場8台) |
禁煙 | 禁煙 |
アルコール | 有り |
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