三重県亀山市関町。ここは、かつて東海道五十三次、47番目の宿場町、関宿があったところです。今回のお蕎麦屋さんは、この趣ある町並みの街道を少しはいったところにあります。築80年近く経つ町家を改装した建物は、入り口からして非常に風情があります。
どっしりとした引き戸に手をかけ、重厚な暖簾をくぐると、すぐさまホールスタッフの方が出迎えて下さいました。予想に反して、イタリアンのようなスタイリッシュな服装の女性の方だったのですが、不思議と違和感などはありませんでした。店内は、中庭を囲むような造りとなっているようです。テーブル席かお座敷かを選べたので、テーブル席をお願いしました。他にも掘りごたつ式のお部屋もあるみたいです。入り口からお部屋までの間の、丁寧に磨かれながら歳月を重ねてきた、独特の光沢をはなつ美しい廊下が、特に印象的でした。
席に着くと、まず、あたたかい蕎麦茶が供されます。太陽がじりじりと照りつける猛暑日ではありましたが、快適な空調と、しっとりと落ち着いた店内の雰囲気が相俟って、あたたかい飲み物がすっと気持ち良く喉を通っていきます。お料理が始まる前に、心がとても穏やかになりました。
平日限定日替わりランチの中から私は「蕎麦ランチ」を、妻は「三段重ランチ」をそれぞれお願いしました。前者は、本日の蕎麦・本日の焼物・デザート。後者は、かけそば/もりそば・本日の焼物・天婦羅・本日の煮物・デザートという構成です。「蕎麦ランチ」の本日の蕎麦は、もりそばとおろし蕎麦とのことでした。また「三段重ランチ」の蕎麦は、どちらか一方を選択する方式でしたので、かけそばをお願いしました。
注文後すぐに、もりそばのつゆ・薬味を運んできてくださり、そのままほとんど待つことなく、焼物、そしてお蕎麦二種が到着しました。妻の三段重もほどなく持ってきていただき、テーブルの上がたちまち華やかになりました。
こちらのお蕎麦は、全て十割蕎麦で、信州長野戸隠から取り寄せた蕎麦粉と、店内の井戸からくみ上げた鈴鹿麗峰の名水を使用して打たれたものだそうです。
ざるにもられたそれは、全体的に灰色がかった、少し太めの、力強さを感じる蕎麦です。微粉を用いて、しっかりと密度を与えられた、コシの強さを自ずと想像できるものです。数本、お箸にとり、まずはそのままいただきました。喉越しを楽しむというよりは、きちんと噛むことで、じわぁ〜としみだす旨味と、後からほのかにやってくる香りを楽しむ蕎麦であるように感じました。
つけ汁は、使われているお醤油の加減か、最初にやや甘みが顔を出すものの、出汁のコクもほどよく感じられ、後味すっきり、バランスのよいものでした。お蕎麦に力があるので、添えられた薬味をすべてつゆに入れ、たっぷりとつけて手繰り込みむと、思わず「うん、美味い」と声がでます。江戸前の、三分の一ほどつけて手繰りこむようなキリッとしたつゆも素敵ですが、このようなタイプの食べ方を想定されている汁も、個人的には、好きです。
また、県内のお蕎麦屋さんを少なからず食べ歩いてきて思うのですが、それぞれのお店の個性ある汁の種類に比べて、来店されているお客さん8~9割の方の食べ方はほぼ一様であるように感じています。薬味をひととおり猪口に入れ、しっかりかきまわしてから、どっぷりとつけて食べられている方が多いです。
もう一品のおろし蕎麦は、ぶっかけスタイルのお品です。こちらは、太めのコシの強いお蕎麦と合わないわけがなく、ズルズル、モグモグを繰り返し、あっという間に食べ終わってしまいました。つゆは、さきほどの、もり汁の辛味が抑えられた感じで、出汁の味が際立つものでした。
お蕎麦を食べおわるちょうど良い頃に、蕎麦湯をもって来てくださり、そのあと、本日のデザートの冷やし善哉をいただきました。
最後に、お見送りをしていただき、お店をあとにしました。軽く頭を下げ、やや重い引き戸をしめた途端、耳をつんざくような蝉のなき声、アスファルトからの強烈な照り返し。じりじりと焼けるような日差しを投げかける太陽。思わず妻と顔を見合わせました。
ほんのひとときではあったものの、二人とも外の暑さを忘れるほど、お料理とともにお店の雰囲気もあじわっていたのです。
店名 | 蕎麦・天婦羅処 萌へ井(亀山市) |
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電話番号 | 0595-96-3006 |
住所 | 三重県亀山市関町木崎250-1 |
アクセス | JR関西本線関駅より徒歩3分 |
営業時間 | 11:30~14:00 17:00~21:00 (ラストオーダー 20:30) |
定休日 | 火曜日 |
平均的な予算(昼) | 1000円〜2000円 |
平均的な予算(夜) | 2000円~4000円 |
予約 | 可 |
クレジットカード | 可 |
個室 | 有り |
席数 | 48席 |
駐車場 | 有り |
禁煙 | 分煙 |
アルコール | 有り |
ホームページ | http://www.soba-mohei.com/index.html |