美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　秋の新そばが出回り始めた10月、長野県善光寺近くに丁寧なそばを打つお店があると聞き訪れました。秋の訪れとともに、7年に1度の御開帳が終わった善光寺界隈はそれまでの喧騒が嘘のように、ゆっくりとした時間が流れています。
　権堂商店街から横道に入り、更に奥まった路地裏にそのお店はありました。

　調理をしているところを見ることができるカウンター席と2階テーブル席、小さいながらも清潔な作りです。しばらくメニューを見て考えていると、手打ちそばまたは釜ゆでのそばと、揚げそば、いなりがセットになった極楽セットが人気メニューであるとアドバイスをいただきました。
　さらに毎週金曜日は限定10食の十割粗挽き蕎麦の日ということで、おすすめの十割粗挽き蕎麦の極楽セットをお願いしました。

　まず運ばれてきたのは五目揚げ蕎麦といなりずし、大変優しい味付けの五目あんかけに蕎麦を使った揚げそば、普段食べるラーメンを揚げた揚げそばと違い、サクッ、フワッとした軽い触感の揚げそばです。大変おいしくいただきました。

　
　
　次の十割粗挽き蕎麦です。新そばらしいほのかなグリーン、そばつゆをつけずにすすり粗挽きなので麺の表面の凹凸を舌で感じます。蕎麦の香りが口から鼻に抜けていきます。そばつゆは江戸風の少し辛めのそばつゆ、蕎麦の麺とのと相性も大変よく感じます。

　お店の名前の「かんだた」とは芥川龍之介の蜘蛛の糸に出てくる主人公の名前とのことです。細く切れやすい蕎麦からつけられたそうですが、善光寺参りの帰りに、この優しい蕎麦を食べればご利益がありそうです。ごちそうさまでした。