暖簾をくぐると石畳の狭い通路が奥まで続いていて、左手にガラスで仕切られた製粉所があり、薄暗い室内で機械が唸っています。突き当りを右手に回ると客席や厨房のある空間に出ます。廊下が奥まで続いていて、ガラス戸があったり、廃村の小学校のようです。
メニューはせいろ蕎麦のみ。1斤、1.5斤かどちらかを選びます。「これから茹でるので、すこしお時間を頂きます」との事です。こちらの蕎麦は熱盛のせいろ蕎麦、蒸し蕎麦なのですが、一度ゆでたものを蒸しあげるようです。
蕎麦汁の入った徳利は素手では持てないほどの熱さで、お手拭きでくるんで持ちます。お碗の中で卵を溶き、蕎麦汁で割ってつけ汁とするようです。汁だけ頂いてみると、卵を混ぜる前提だからでしょうか、関西の蕎麦汁とは思えない醤油辛さ、甘みも昆布のうまみもありません。なぜか赤味噌の上澄みのような風味がしました。
蓋の上のものをテーブルにおろしてセッティングします。碗の中で卵を溶き、汁で割ります。汁は本当にアツアツ、混ぜると卵が熱せられて白濁するほどです。
せいろのふたをあけると、ふわっと湯気が立ち上がります。完全に湯がき過ぎ...もとい、見るからにやわらかそうな、ねずみ色の蕎麦です。ぺしゃっと固まっています。固まりから数本恐る恐る、そうっとつまみ出します。なんとかぎりぎりつながって持ち上げられるほどの軟らかさです。
蕎麦だけ口に運んでみます。蕎麦の風味はほとんどありません。見た目を裏切らず、腰も皆無です。ふわふわふにゅふにゅです。汁につけて頂きます。卵が絡まり、ずるりっとすすります。卵汁と絡まった温かく軟らかい蕎麦は、どこか懐かしく、優しい味です。
「こちらの蕎麦を食べる時は専門店の蕎麦の概念を捨てねばならぬ」とおっしゃっている方がいました。なるほど、私の思っている蕎麦とは全く違いますが、このほかほかやわらかい、温かい食べ物は、美味しいと思いました。
パンとパンがゆという感じでしょうか。
食べ終わる頃に「かまくら」と呼ばれる湯桶を持ってきてくれました。この金属製の湯桶も持ち手に藤がまかれているにもかかわらず、素手で持てないほどの熱さ。なかの蕎麦湯はさらっとしていました。卵汁を割って頂きました。
こちらのお店は堺市民なら知らぬ人はいないほどの有名店ですが、まったく受け付けない人と、魅せられて定期的に通う人の二極化になっています。今回私は堺市民の義務として初来店しましたが、食べ物として美味しいと思いました。たまに食べたくなる味です。
店名 | ちく満(ちくま)(堺市) |
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電話番号 | 072-232-0093 |
住所 | 大阪府堺市堺区宿院町西1−1−16 |
アクセス | 阪堺電車「宿院駅」すぐ、または南海堺駅徒歩10分 |
営業時間 | 10:30-21:30 |
定休日 | 月曜日 |
平均的な予算(昼) | |
平均的な予算(夜) | |
予約 | |
クレジットカード | 不明 |
個室 | |
席数 | |
駐車場 | |
禁煙 | 不明 |
アルコール | |
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