美味しい蕎麦をもっと愉しむための蕎麦情報ウェブマガジン

　神田駅南口から中央通りを3分位歩きます。大通りから入った路地裏ですが、日本橋老舗そば屋の風格ある店構えです。

　ドアを開けて入ると、昼時をやや過ぎた時間でも、店内のテーブル席はほぼ一杯でした。実は1週間前に来て｢天もり｣を食べたのですが、そば前の肴と樽酒を頂きすぎて、肝心のそばの味を見失ってしまいました。今日はアルコール抜きです。 

　おそば屋さんの定番、「きつね」と「たぬき」は品書きにありません。｢お客様に化かすものをお出しするのは失礼｣だから、という理由だそうです。

　注文したのは、やはり｢天もり｣。天ぷらそばを暑い夏でも食べやすく、冷たい「せいろ」にしたのが、始まりとか。名店と言われるようになるには、長年の工夫と努力の軌跡が隠されていることを感じます。

　もりは一番粉を使用。ひと筋ふた筋とそばを手繰り、香りと喉越しを楽しみます。本わさびそして千住のきざみ葱が付いています。濃い目のつゆに芝海老のかき揚と新鮮な三つ葉が散らしてあります。天ぷらの衣につゆがたっぷりと染み込んだ、絶妙な深みのある味わい。老舗のそば屋が持つ独特の雰囲気も、味わいの一つなのだろう思いながら、残ったつゆにそば湯を足して天もりの余韻を味わいました。